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東京大学附属図書館アジア研究図書館
上廣倫理財団寄付研究部門
Uehiro Project for the Asian Research Library

COLUMN

【世界の図書館から】マルアシー図書館(イラン)

マルアシー図書館正面

マルアシー図書館(イラン)

水上 遼

東京大学大学院人文社会系研究科アジア史専門分野博士課程 / テヘラン大学人文科学部歴史学科研究生

 

マルアシー図書館とその利用案内

筆者は2014年11月現在、テヘラン大学に留学しており、これまでに数度マルアシー図書館を利用してきた。ここでは、その体験をもとに、マルアシー図書館の紹介と、主に写本・ファクシミリ本の閲覧のための手順などを説明する。尚、マルアシー図書館に限らず、イランでは様々な要因により、閲覧のための手続きが突然変更されるといったことがしばしば発生する。ここでの情報はあくまで今現在のものであるということを予めご理解いただきたい。

図書館の外観
図書館の入り口上:図書館の外観  下:図書館の入り口

マルアシー図書館の正式名称は、大アーヤトッラー・マルアシー・ナジャフィー大図書館 (Ketābkhāne-ye Bozorg-e Ḥażrat-e Āyatollā al-ʻOẓmā Marʻashī Najafī)という。同図書館のある都市ゴム(またはコム)は、首都テヘランの南約150キロに位置し、ゴム州の州都である。テヘランのバスターミナルからゴムのバスターミナルまでは片道1時間半ほどの旅になる。ゴムは歴史上、現在に至るまでイランにおける最も重要な宗教・学術センターの一つであり、同地にある聖域(ḥaram)への参詣や、神学校や大学での勉学のために各国から人々が集まる国際都市である。そして、マルアシー図書館はその聖域の脇を通る、書店が立ち並ぶエラム通り(kheyābān-e Eram)に位置する。ゴムのテヘラン方面のバスターミナルからは、バス到着後に聖域まで乗合バスが出ており、降りるとそこから徒歩5分程度でマルアシー図書館に行くことができる。

図書館の名前になっているマルアシー・ナジャフィー(1897-1990)はイラクのナジャフ出身の法学者であり、12イマーム派の大アーヤトッラーの称号を得た人物である。生涯の大部分をゴムで過ごし、1965年にマルアシー図書館を設立した。マルアシー図書館はイラン国内屈指の大図書館とされており、所蔵する書籍は、既刊のカタログの通し番号だけでも写本が16,100点、ファクシミリ本は2,000点にのぼる。そして、この中にはイスラーム学、西アジア史を研究する者にとって重要な写本が数多く含まれている。カタログは現在までに、写本カタログが40巻、ファクシミリ本カタログが5巻刊行されている(下記の目録情報を参照のこと)。

また、イラン国内の、イスラーム議会図書館やテヘラン大学図書館といった、他の図書館・文書館の蔵書とあわせた横断検索が可能なサイトがあり、こちらからも検索が可能である(lib.ir, アーガーボゾルグ)。しかし、これらのサイトにはまだ各図書館の蔵書の一部しか登録されていないため、最終的な所蔵の有無を調べるには、やはりカタログを手に取る必要がある。

次に、同図書館の利用に関して説明する。一般書の利用のみであれば、入り口でその旨を伝え、パスポートを見せるのみで問題ない。一方、写本やファクシミリ本の閲覧の場合、事務部長であるマルアシー氏に宛てた事前の申請が必要となる。申請方法には、直接赴いて申請書を渡すか、FAXまたはメールで申請書を送付するかがあるが、メールでの申請が最もやりやすいだろう(連絡先は下記の基本情報欄を参照)。申請書には、自分の氏名、所属を示した上で、閲覧したい写本またはファクシミリ本のタイトル、著者、写本番号と写本カタログ上での記載巻号、ページを記す。また末尾に申請者の住所、イランから連絡可能なメールアドレス、電話番号を記す。複写を希望する場合はあらかじめその旨も申請書に記しておく。また、同時にパスポートの写真ページのコピーも提出しなければならない(メールの場合は添付ファイルで)。尚、この申請書はペルシア語で書くことが望ましいが、英語で書いても構わないとのことであった。

マルアシー氏の説明では、2、3日で許可がおり、メールまたは電話で返信するとのことだが、1週間経っても返事がこないこともあるため、適宜こちらから電話し、許可がおりたかどうかを確認すると良い。

写本・ファクシミリ本の閲覧の際は、地上階のオフィスにいるマルアシー氏に閲覧に来た旨を伝える。閲覧は入り口にてカバン類を預けた後、閲覧室で行う。ノート、筆記用具は持ち込み可能である。閲覧室には、アラビア語、ペルシア語の人名録やハディース集、歴史書などが並んでおり、あわせて利用することができる。複写はモノクロで1枚2,000リヤル、カラーで2,500リヤルであり、申請後1週間ほどで出来上がる。こちらも、図書館側から連絡が無いようならば、確認の電話をすると良い。

尚、前述のとおり、マルアシー図書館の面するエラム通りは様々な書店が密集しており、ペルシア語書籍だけでなく、アラビア語書籍も手に入れることができる。ゴムはイランにおける出版の中心地の一つであり、テヘランでは手に入りにくい本も多い。ゴムの書店については、黒田賢治「イラン・イスラーム共和国書店案内:コム編」『イスラーム世界研究』4-1/2, 2011, pp. 643-655を参照されたい。

また、ゴムは正午過ぎのアザーンの後、各書店が一斉に閉まってしまい、夕方4時や5時ごろに再び開店しはじめる。マルアシー図書館も午後1時半までしか開いていない。そのため、ゴムには、午前中に、時間に余裕をもって訪れることをすすめる。尚、エラム通りを聖域の方に進めば、ケバブやサンドイッチを中心とする店が点在するため、この辺りで昼食をとることができる。

カタログ

※翻字はnacsis翻字規則に基づく
■写本カタログ(現在まで49巻が刊行されており、写本番号1番から19,700番までが収録されている)
①第1–27巻
Fihrist-i nuskhahʹhā-yi khaṭṭī-i Kitābkhānah-i ʿUmūmī-i Ḥaz̤rat Āyat Allāh al-ʿUẓmá Najafī Marʿashī (فهرست نسخه‌های خطی کتابخانه عمومی حضرت آیة الله العظمی نجفی مرعشی, مد ظله العالی)→Cinii Booksで情報を見る

②第28–49巻(①の続き。タイトルが一部異なるので注意が必要)
Fihrist-i nuskhahʹhā-yi khaṭṭī-i Kitābkhānah-i Buzurg-i Ḥaz̤rat Āyat Allāh al-ʿUẓmá Marʿashī Najafī (فهرست نسخه‌های خطی کتابخانۀ بزرگ حضرت آیت الله العظمی مرعشی نجفی)→Cinii Booksで情報を見る

■ファクシミリ本カタログ(現在まで5巻が刊行されており、ファクシミリ本番号1番から2,000番までが収録されている)
③第1, 2巻
Fihrist-i nuskhahʹhā-yi ʿaksī-i Kitābkhānah-i ʿUmūmī-i Ḥaz̤rat Āyat Allāh al-ʿUẓmá Marʿashī Najafī (فهرست نسخه‌های عکسی کتابخانه عمومی حضرت آیت الله العظمی مرعشی نجفی)→Cinii Booksで情報を見る

④第3–5巻:Fihrist-i nuskhahʹhā-yi ʿaksī-i Kitābkhānah-i Buzurg-i Ḥaz̤rat Āyat Allāh al-ʿUẓmá Marʿashī Najafī (فهرست نسخه‌های عکسی کتابخانۀ بزرگ حضرت آیت الله العظمی مرعشی نجفی:  گنجینۀ جهانی مخطوطات اسلامی, ایران-قم)→Cinii Booksで情報を見る

 

図書館ウェブサイト www.marashilibrary.com
入館・閲覧に必要なもの パスポート

ただし、写本・ファクシミリ本の閲覧を希望する場合は、E-mailで事前申請が必要。

その際にパスポートの写真ページを添付する。

申請から閲覧許可が降りるまで、また複写の申請から受け取りまで、それぞれ1週間程度かかる。

メールアドレス: info@marashilibrary.org

電話番号:025-3774197078

Fax : 025-37743437

開館日時 日~木 7:30-13:30