研究テーマ
中世アラブ都市社会に生きた人々の「生態」に着目し、つながりをデジタル・ヒューマニティーズ、史料精読の両面から明らかにすることで、生き抜くための戦略知を探ることを目指しています。近年では、デジタルテキスト化した史料の構造化やResource Description Framework(RDF)を用いて15世紀の学者、行政官をはじめとする文民エリートのネットワークをデータ化することに挑戦しています。
また学知の社会との共創にも関心があり、人文社会学の普遍的な英知を対話的に実感・共有できる機会を作ることをライフワークにしています。これまでは保育園や民間企業とコラボレーションし、親子ワークショップや一般向けの企画展などを行なってきました。アウトリーチ活動では、研究者から一方的に情報を伝えるのではなく、「問い」を通じた双方向性のあるコミュニケーションによって生まれる「化学反応」から、新たな学びを得たいと思っています。
<キーワード>
マムルーク朝史/地中海史/文民エリート/プロソポグラフィー/デジタル・ヒューマニティーズ/学際研究/学知の共創
経歴
慶應義塾大学院文学研究科後期博士課程在学中にエジプト・アラブ共和国立カイロ大学留学(2008~2011年)。博士(史学)。
慶應義塾大学文学部・言語文化研究所講師、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所特任助教等を経て現職。
主要業績
<論文>
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「後期マムルーク朝社会におけるワーイズの実像:人気説教師クドゥスィーの場合」、『西南アジア研究』71号、2009年、28~43頁。
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「中世アラブ社会におけるワアズとワーイズ:その教育的側面を中心に」、山本正身編『アジアにおける「知の伝達」の伝統と系譜』、慶應義塾大学出版会、2012年、293~329頁。
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“A Popular Preacher in the Late Mamluk Society: A Case Study of Abū al-ʻAbbās al-Qudsī”, Orient 48, 2013, pp. 21-35.
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「後期マムルーク朝有力官僚の実像:ザイン・アッ=ディーン・イブン・ムズヒルの家系と経歴」、『史学』83/2-3号、2014年、37~81頁。
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「後期マムルーク朝有力官僚の実像(二):ザイン・アッ=ディーン・イブン・ムズヒルの公務と慈善」、『史学』84/1-4号、2015年、135~180頁。
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“The Muzhir Family: Marriage as a Disaster Mitigation Strategy”, Orient 54, 2019, pp. 127-144.
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「後期マムルーク朝有力官僚と聖地:ザイン・アッ=ディーン・イブン・ムズヒルの巡礼とハラマインにおける慈善」、『史学』88/2号、2019年、23~52頁。
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“Formation of the Ideal Bureaucrat Image and Patronage in the Late Mamlūk Period: Zayn al-Dīn Ibn Muzhir and ʻUlamāʼ”, Al-Madaniyya: Keio Bulletin of Middle Eastern and Asian Urban History 1, 2021, pp. 41-61.
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「15世紀エルサレム巡礼記にみえるマムルーク朝の都市社会:艱難辛苦の旅の背景」、神崎忠昭、長谷部史彦編『地中海圏都市の活力と変貌』、慶應義塾大学出版会、2021年、279~297頁。
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「ザイン・アッ=ディーン・イブン・ムズヒルをめぐる「夢」:奇跡譚にみえる後期マムルーク朝有力官僚の人的コネクション」、『史学』90/1号、2021年、57~73頁。
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「“イスティドゥアーによるイジャーザ”に基づく15世紀ウラマーの名目的関係構築」、『西南アジア研究』97号、2024年、1~22頁。
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「マムルーク朝後期の人名録にみるウラマーの「悪評」:「記録」の選択から「記憶」としての共有へ」、『史学』92/4号、2024年、87~109頁。
<出版>
- ジョナサン・バーキー著、野元 晋・太田(塚田) 絵里奈共訳『イスラームの形成:宗教的アイデンティティーと権威の変遷』、慶應義塾大学出版会、2013年。
受賞歴
- 第12回「未来を強くする子育てプロジェクト」スミセイ女性研究者奨励賞(2019年)
所属学会
- 日本オリエント学会
- 日本中東学会
- 西南アジア研究会
- こども環境学会
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