2024年度から第三期を迎えたU-PARLでは、アジア研究図書館の研究ハブ機能拡充の一環として、東京大学内における学術資源のデジタル化公開や研究情報資源の管理・提供に関する研究を進めています。この度、東京大学東洋文化研究所の所蔵する東アジア地域最大のアラビア文字写本群「ダイバー・コレクション」のより高度な活用を目指し、東洋文化研究所、東京大学人文社会系研究科との連携のもと、β版データベースを公開する運びとなりました。
- データベース関連リンク:
- ダイバー・コレクション・β版データベース https://daiber.u-parl.lib.u-tokyo.ac.jp/
- プロジェクト概要 https://daiber.u-parl.lib.u-tokyo.ac.jp/about/
- データベースの利用方法 https://daiber.u-parl.lib.u-tokyo.ac.jp/guide/
「ダイバー・コレクション」はイスラーム哲学、神学、写本学を専門とし、フランクフルト大学、アムステルダム自由大学などで教鞭を執ったハンス・ダイバー教授(Prof. Hans Daiber, 1942-2024年)が中東諸国における研究活動の傍ら収集した、アラビア語を中心とした写本群であり、東洋文化研究所が1986-87年度(コレクションⅠ:367冊)および1994年度(コレクションⅡ:153冊)の2期にわたって購入したものです。その内容はクルアーン学、ハディース学、法学、教義学、神学、神秘主義、終末論など、多岐にわたる主題を網羅し、複数の著者自筆本をはじめとする極めて貴重な資料を含んでいます。
「ダイバー・コレクション」の電子化は東洋文化研究所によって2006年に行なわれました(https://ricasdb.ioc.u-tokyo.ac.jp/daiber/db_index.html)。このデータベースは中東地域研究者、イスラーム研究者に広く利用されてきましたが、公開から20年近くを経て、現代の学術的および技術的基準を満たす上で大幅な改善の余地が見受けられるようになりました。そこで2024年度以降、U-PARLの主導のもと、データベースの再構築プロジェクトが始動しました。U-PARLでは、多様なステークホルダーが提供者と利用者の区分を越えて協働し、ともに「育てる」アーカイブの実現を掲げています。この方針のもと、「ダイバー・コレクション・データベース再構築事業」は、コレクションを所蔵する東洋文化研究所、運用基盤とアクセス環境整備を行なうU-PARL、そしてデータベースの構築を担う東京大学大学院人文社会系研究科のリサーチエンジニア・チームからなる協働型のコミュニティ(“Team Daiber”)によって推進されています。
東京大学附属図書館アジア研究図書館上廣倫理財団寄付研究部門(U-PARL)
太田絵里奈(特任助教、西アジア地域担当)
一色大悟(特任准教授、U-PARL副部門長、URA)
澤裕章(特任専門職員、メタデータ作成)
東京大学大学院人文社会系研究科
大向一輝(准教授、U-PARL兼務教員)
阿達藍留(博士課程、β版データベース構築)
東洋文化研究所
森本一夫(教授、アジア研究図書館研究開発部門(RASARL)兼務教員)
本β版データベースは、相互運用性の高いメタデータ仕様や転写方法の改良などをめぐり、多様な関係者の意見や提案を受け入れ、修正・更新を続けながら発展する「育てるアーカイブ」のプラットフォームとして作成されました。「再構築事業」ではこのβ版データベースを「育て」、東京大学デジタルアーカイブ・ポータルの「アジア研究図書館デジタルコレクション」を通じて全国的なポータルサイトに接続し、アクセシビリティとユーザビリティを向上させることで、アラビア文字写本研究に新たな基盤を提供すること、また研究情報資源の管理・提供におけるモデルケースとしてU-PARLのミッションを体現し、学術研究に貢献することを目指しています。
2025年6月から始まる第一次公開では、コレクションIのMs. 1-50を対象とし、今後定期的に資料及びメタデータが追加、更新されていく予定です。本データベースの構築プロセスは、「ダイバー・コレクション」および「アーカイブ構築」に関心を持つすべての方々に開かれています。メタデータの修正、β版データベースに関するご意見、その他お気づきの点がございましたら、題名を「ダイバー・コレクションについて」とし、こちらのフォーム(https://u-parl.lib.u-tokyo.ac.jp/ja/contact)よりお知らせください。
2025年6月
東京大学附属図書館
アジア研究図書館上廣倫理財団寄付研究部門
太田絵里奈(西アジア地域担当)