国立国会図書館デジタルコレクションで見る古いクルアーン

特任研究員 須永恵美子

国会図書館はよく利用されますか? 国立国会図書館には、国内で出版されたほぼすべての図書が所蔵されています。
ほしい資料が大学図書館や地元の図書館に見当たらない場合、最後の頼みの綱は国会図書館ですが「わざわざ国会図書館までは…」「遠いし…」と億劫になってしまうこともありますよね。ではインターネット上で国会図書館の本が閲覧できるならどうでしょう。

今年(2022年)5月に、国会図書館所蔵の一部の資料にオンラインでアクセスできる「個人向けデジタル化資料送信サービス」が始まり、話題になりました。

国会図書館では、以前から多くの資料をインターネット上で公開していました。今回は、これまで国会図書館内部の末端などでしか見られなかったデジタル化済みの資料のうち、絶版など入手の難しい資料に個人でアクセスできるよう開放したものです。利用には、自動車免許証などの身分証を含む事前の登録が必要になります(手続きはオンラインで完結)。

個人「送信」と言っても、どこかで物理的に受け取るものではなく、資料名をクリックすればリアルタイムで閲覧できます。電子書籍やウェブ漫画のように、見たいページを行き来でき、拡大や縮小も可能です。

国立国会図書館デジタルコレクション

デジタルコレクションのページに入ると、検索バーのすぐ下に「インターネット公開」「図書館・個人送信資料」「国立国会図書館内限定」のチェックボックスがあり、「図書館・個人送信資料」にチェックを入れて使用します(初期設定では空欄になっています)。

例えば、筆者が専門とするイスラーム地域の研究では、聖典クルアーン(コーラン)は重要な一次資料です。日本では戦前からクルアーンが出版されていますが、多くが絶版になっています。「個人送信」サービスを使うと、国会図書館が所蔵する古いクルアーンを見ることができます。

個人送信サービスのログインページ

1934年(昭和9年)に東京回教印刷所から出版されたアラビア語の『コーランكلام شريف』表紙

ファーティハ(開扉章)。ページは横にたぐるか、コマ番号を指定してジャンプする

拡大機能でアラビア語のシャクル(母音記号)もクリアに読み取れる

日本語で書かれた奥付

この他にも、日本で最初の翻訳と言われている1920年の『コーラン經』(坂本健一訳)が IIIF画像で公開されています(初版は「インターネット公開」対応のため、誰でも登録なしで閲覧できます。別の版では個人送信サービスへのログインが必要です)。

こうした古い本は、たとえ現物を手にできても取り扱いに注意が必要で、気軽にパラパラめくるわけにはいきませんでした。これだけ綺麗な画像を、閉館時間を気にせずに閲覧できるのはとてもありがたいです。
更には今後、自宅での印刷(プリントアウト)も可能になる予定で、使い勝手はますます良くなりそうです。

コロナ禍で多くの図書館が休館や閉館を余儀なくされましたが、こうしてインターネット公開の動きが加速した側面もあります。
アジア研究図書館でもデジタル化を進めていますので、併せて御覧ください。

 

※今回公開された資料は、国会図書館の蔵書全体で見ればごく一部です。デジタル公開されていない資料でも、オンラインで申請できるコピーの取り寄せ(遠隔複写サービス)に対応している資料もたくさんあります。

※デジタル化の大前提となる資料の撮影については、『国立国会図書館月報』733号(2022年5月)に特集されています。撮影者の指の映り込みやものさしを使った撮影のエピソード、200台のハードディスクなど、この巨大プロジェクトの裏舞台を覗くことができます。

国立国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/

国立国会図書館月報
https://www.ndl.go.jp/jp/publication/geppo/index.html

東京大学アジア研究図書館デジタルコレクション
https://iiif.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/repo/s/asia/page/home

September 7, 2022