【世界の図書館から】湖南大学図書館(中国)

湖南大学図書館総館

湖南大学図書館(中国)

石原遼平

東京大学大学院人文社会系研究科博士課程

湖南大学は中国湖南省長沙市内の湘江と嶽麓山にはさまれた地に位置する中国国家重点大学の一つである。湖南大学の前身は北宋時代(976年)に設立された嶽麓書院だとされている。

筆者は2012年から二年間湖南大学に留学していたので、今回はその際に利用した湖南大学図書館を紹介したい。

湖南大学図書館は総館・北校区分館・特蔵分館および11の専業分館からなる。専業分館には後述する嶽麓書院御書楼も含まれる。

多くの中国の大学図書館と同様に広い自習スペースがあり、いつもたくさんの学生が自習している。

総館には庭園が併設されており、暖かい日には庭園で読書をする学生も多い。庭園には学生だけでなく近所の住民やカワセミも訪れる。

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蔵書

湖南大学図書館は蔵書308万冊と110種のデータベースを所蔵しており、OPACで検索することが出来る。(http://opac.lib.hnu.cn/opac/index)ただし、登録されていないものや間違った名前で登録されているものもあるので注意が必要である。

近年はデジタルコンテンツにも力を入れており、「書院文化資料庫」、「湖南民俗資料庫」、「湖南人物庫」、「金融文献数據庫」など独自のデータベースを構築・運用している。

専業分館の一つである嶽麓書院御書楼には元武渓書院刊『事文類集』をはじめ貴重な版本が所蔵されている。2012年に嶽麓書院内に中国書院博物館が開設されると一部の漢籍は御書楼から博物館に移された。

湖南大学が2007年に香港の骨董市場で購入した嶽麓書院蔵秦簡も中国書院博物館に所蔵されているが、残念ながら現在整理中でまだ展示はされていない。

現在の総館が出来るまで使用されていた1947年建造の旧図書館は現在特蔵分館として使われており、書画彫刻などの芸術作品や湖南省出身の人物の資料および湖南大学関係者の手稿や授業の映像などのコレクションが収蔵されている。特蔵分館は景印本も収集しており、中華再造善本シリーズを全巻収蔵している。

利用方法

湖南大学の学生であれば、学生全員に発行される校園カードというICカードを入口ゲートにかざして入館し利用することが出来る。貸し出しや書庫への入庫もこのカードで行われる。

筆者は学外者として利用したことがなかったため、今回湖南大学図書館に学外者の利用方法を問い合わせてみたところ、湖南大学の学生・教職員・研修生以外は基本的には利用できないそうである。ただし、湖南大学から正式に来賓として招聘してもらうことが出来れば、臨時校園カードが発行されるため利用することが出来る。また、実際に試したわけではないので保証はできないが、今回問い合わせた職員によれば、提携関係にある図書館の利用証があれば利用できるとのことなので、学外者が湖南大学図書館を利用する場合、まず湖南図書館など提携図書館の利用証を取得する必要があるかもしれない。(湖南図書館の利用証は湖南図書館の窓口にパスポートを持参して120元(うち100元はデポジット)を支払えば発行できるようである。)

請求番号から本を探す場合は番号順に配架されていないことがあるので、あるべきところに無くてもすぐにあきらめず近辺も探してみたほうがよいだろう。
歴史

湖南大学の前身は嶽麓書院とされているため、湖南大学図書館の歴史も嶽麓書院の蔵書庫に始まる。嶽麓書院の蔵書庫は当初青楼と呼ばれており、宋咸平四年(1001)には真宗皇帝から経書や玉篇などを下賜されている。後に蔵経閣、尊経閣と呼ばれるようになり、清康熙二十六年(1687)に康熙帝から経書等が下賜されて以降は御書楼と呼ばれるようになった。「御書楼」と書かれた扁額は朱熹の書いた文字を集めて作ったものである。

嶽麓書院御書楼

王朝交代の戦乱や災害のたびに嶽麓書院御書楼の蔵書は焼失・流出したが、1903年に清光緒帝が書院を廃止し、学堂を設置した際にも大量の蔵書が流出したとされる。

その後、嶽麓書院は湖南高等学堂~湖南高等師範学校~湖南公立工業専門学校といった変遷を経て、1926年に湖南大学として新たにスタートした。これにともなって大型の図書館が設置されることになり、1933年9月に湖南大学土木系教授であった蔡沢奉の設計したゴシック様式の図書館が完成した。この図書館は総面積が2666.67平方メートル、蔵書が63,000冊(1937年時点)あり、当時としては規模・蔵書数ともに華中華南地域で最大の図書館であった。

しかし、日中戦争の武漢作戦のさなかに湖南大学も空襲を受け、旧図書館は完成から五年も経たない1938年4月10日に完全に破壊された。所蔵していた貴重漢籍の大部分はこの時に失われたと言われている。現在その跡地には、残った建材の一部を使って作った記念モニュメントが建てられている。

湖南大学老図書館遺跡

その後、第四次長沙会戦(1941年4月~5月)の際に湖南大学は再び空襲を受け、今度は嶽麓書院御書楼が破壊され、再び多くの蔵書が失われた。(現在の御書楼分館の建物は1986年に復元されたものである。)

終戦後1947年になってやっと湖南大学図書館が本格的に再建された。この図書館は当時の湖南大学土木系教授柳士英の設計による、伝統的な瑠璃瓦の屋根と洋風建築と融合させたもので、湖南省の代表的な現代建築として2002年に長沙市によって近現代保護建築に指定されている。

1947年建造の旧図書館(現特蔵分館)

1950年代には貴重書の一部が院系調整により湖南師範大学図書館などに移管された。

その後、蔵書の増加とともに1947年建造の図書館は手狭になり、1979年に現在の総館が建てられた。総館は御書楼と旧図書館(特蔵分館)を結ぶ湖南大学の中軸線の延長線上に位置しており、伝統の継承と発展が表現されているらしい。

2000年には湖南財経学院が湖南大学に統合され、湖南財経学院図書館およびその蔵書がそのまま湖南大学図書館北校区分館として引き継がれた。

以後、蔵書およびデータベースがさらに拡充され、現在に至る。

図書館ウェブサイト http://lib.hnu.cn/
入館・閲覧に必要なもの 湖南大学校園カード(湖南大学学生証に準ずるICカード)*湖南大学校園カードが入手できない場合、提携図書館の利用証でも利用可能なようである。
開館日時 総館・北校区分館:月~日8:00-22:30、特蔵分館・専業分館:月~金 8:00-11:45; 14:30-17:30