【世界の図書館から】カイロ・アメリカン大学図書館(エジプト)

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カイロ・アメリカン大学図書館(エジプト)

澤井真

東北大学大学院文学研究科宗教学専攻博士課程、カイロ・アメリカン大学大学院アラブ・イスラーム文明専攻修士課程

2011年の「アラブの春」の一連の動きのなか、エジプトでは民主化を求める民衆がタハリール広場に集まった。アラビア語で「タハリール」とは「分離、解散」を意味するが、彼らは長らく続いたムバーラク政権からの分離を突きつけた。その後、ムスリム同胞団を指示母体とする政権誕生や、軍事クーデターを経て、スィースィーが現政権が誕生するまでの一連の出来事の舞台として、タハリール広場は一つの象徴的な場所として機能し続けてきた。

いわゆる古き良きエジプトを知る人々にとって、カイロ・アメリカン大学(通称「アメ大」)と言えば、このタハリール広場脇にあるという印象ではないだろうか。広場周辺にはツタンカーメンの黄金のマスクが展示されているエジプト博物館、ビザ更新を行なうモガンマア、そして地下にはメトロでは乗り換えに便利なサダト駅がある(2014年2月現在は閉鎖されており、全ての列車は通過している)。1919年に創立されたカイロ・アメリカン大学は、カイロの中心地に位置しながらエジプトの趨勢もまた見守ってきた。

カイロ・アメリカン大学は、2008年に本部キャンパスとその一部を除いて、ニュー・カイロ(スィッタ・オクトーバー地区)へと新キャンパスを移転した。その結果、現在では、タハリール広場横の旧キャンパスを「メイン・キャンパス」と呼び、ニュー・カイロ地区の新キャンパスを「ニュー・キャンパス」と呼んでいる。メイン・キャンパスは、書籍店や講演会場のある「グリーク・キャンパス」と、ビジネスコースなどのために利用されている「ファラーキー・キャンパス」に別れている(後者は地図上では非掲載だがグリーク・キャンパスからすぐ近くの場所にある)。この大学の移転に伴って、図書館もまたニュー・キャンパスへと移転しており、メイン・キャンパスにはファラーキー・キャンパス側に小さな図書室が残るだけである。

筆者は、2012年9月から2014年9月まで同大学大学院に留学していた。カイロ・アメリカン大学に関する情報や図書館の利用方法については、基本的に大学のホームページに書かれている。しかしながら、ここでは筆者の2年間の留学での経験に基づいて、大学外からニュー・キャンパスの図書館を訪れる研究者や学生の目線に立って、キャンパスへのアクセス方法も含めて説明することにしたい。

ニュー・キャンパスへのアクセスとしては、タクシーか、大学へ向かうバス(バス代は後払い)がある。タクシーで大学へ向かう場合は、メーターのついた白タクシーをつかまえて、「タガンマア・ハーミス」(第5地区)にあるアメリカン大学(「ガーミア・アムリキーヤ」と発音)であることを必ず伝えたほうが良い。メーターが正常に動いた場合、市街地(ダウンタウン)からだと約80ポンド、マアディー地区からだと最安で約50ポンドだが、道路状況によって変化する。所要時間は渋滞がなければおよそ1時間強である。タクシーは、ビジター用の入り口であるゲート1へと向かい、基本的には門を越えて自動車の降車場まで入れることができる。

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ニュー・キャンパスの外観(ゲート1側の入口。この入口をタクシーで通過した後に、降車場へ行くことになる)

 

バスを利用する場合、カイロの各方面から教職員・学生のためのバスに乗ることになる。カイロの各地からアメリカン大学へ向かうバスの時刻表と停留所は、アメリカン大学ホームページのバスサービスのホームページに掲載されている(http://www.aucegypt.edu/bus/Pages/Default2.aspx)。テロ警戒のために、バスにはアメリカン大学のロゴや名前はなく、またバスの停留所を示す看板も当然ない。また、2015年に入ってから、頻繁に時間と場所を少しずつ変えているので注意が必要である。片道のバス代は2015年2月現在では28ポンドだが、毎学期少しずつ値上げされている。バスはバス・ターミナルのあるゲート4から大学の敷地内へ入る。教職員・学生はバス用ゲートを通過した後で、学生証などを提示して、キャンパス内へ入るゲートを通過することになる。バスを利用した場合、図書館が目の前に見えるにもかかわらず、ビジター用の入り口であるゲート1へと歩いていかなければならない(徒歩約10分)。

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ニュー・キャンパスの地図(キャンパス内の各所に貼られている)

 

図書館の利用に関しては、あらかじめ英語またはアラビア語のフォームに記入するとともに、最低2日前までに担当者とメールで連絡を取る必要がある(http://library.aucegypt.edu/dept/membership/index.htm)。2015年2月現在、必要な書類としては、大学(あるいは研究機関)からの紹介状、パスポートとそのコピー、そして150ドルである。利用申請が認められると、図書館利用証が発行される。図書館は学期中だと8時半から11時まで利用可能であるが、利用時間が異なるため事前に確認されたい。こうした情報は全て図書館のホームページに掲載されている。

さて、大学図書館は地下1階から地上3階までの5階に別れている。地上階を「グラウンド・フロア」と呼んでいるため、日本で言う2階は1階にあたる。図書館にある書籍に関しては、アメリカン大学図書館(http://library.aucegypt.edu/index.htm)で学外からアクセスすることができる。

図書館の入口(学生は学生証をかざして入る)を越えると、正面にレファレンス兼受付カウンター、右手にヘルプディスクがある。グラウンドフロアには、学生たちが利用するパソコンとともに、事典類のレファレンスがある。各階にもパソコンがあるので、文献を検索することが可能である。ウィンドウズがインストールされており、オフィスソフトやインターネットが英語とアラビア語で利用可能である。

地下1階は「プラザ・フロア」と呼ばれている。ここには雑誌が設置されている。同室にコピー・センターがあり、書類に必要箇所を記入すれば、複写を頼むことができる(ガイドラインによると、1枚あたり15pt.とのこと)。また、地上1階と2階では開架式で図書が置かれている。イスラーム教や中東研究に関する書籍は、1階に置かれている。アメリカン大学に提出された修士論文は、2階に配されている。

3階の貴重書閲覧室では、主に稀覯本や個人蔵書の閲覧とともに、不定期に特別展が開催されている。また、貴重書ではないが書籍の幾つかも3階の開架書架に並んでいる。ここでは入室に際してカバンを持ち込むことができないので、鍵付きロッカーに荷物を預けることになる。利用申請は既に済ませているので、利用に関して手続きを取る必要はない。ただ、閲覧室内で地図を利用したり個人蔵書室に入る際には、史料の性格的にも正面右手のヘルプ・ディスクへ行って、一緒に取り出してもらったほうがよいように思われる。また書籍の複写については、ヘルプ・ディスクで申請し同階で複写可能である。そうすれば地下1階へ降りる必要もなく、複写してくれる時間も早い。階下に所蔵されている文献であっても、3階まで文献を持っていって複写を一度試みたらよいだろう(これはもちろん裏技であるために、貴重書閲覧室に大量の書籍を持ち込むのはお勧めできない)。また、写本等についてはデジタル・アーカイヴで公開されている(http://digitalcollections.aucegypt.edu/cdm/)。

市内中心部へ帰る方法であるが、同じくタクシーを拾う方法と、大学が運営するバスがある。帰りはどのゲートから出ることもできるが、タクシーを拾うのであればゲート1から出て、さらに大通りまで出るなどして流しのタクシーをつかまえるしかない。ただし、ニュー・キャンパスはカイロの中心部から遠く、夜遅くだとタクシーがつかまらなかったり、治安も悪くなったりするので夕暮れ前が良いだろう。バスで帰る場合は、ゲート4から出て、バスターミナルの入口で28ポンドを先払いする。事前にバスの時刻を調べておくとよいだろう。どの行き先のバスも同じ時間に出発するが、メイン・キャンパス行き(Root 12)のバスは他の行き先よりも本数が多い。特に市内中心部へ向かうルートは、夕刻の帰宅ラッシュ時は大渋滞が頻繁に発生する。通常1時間の道のりであっても、3時間ほどかかることもあるので余裕をもって行動していただきたい。

なお、大学構内にはマクドナルドやサブウェイ、食堂で食事を取ることができる。学期中、昼食時(12時45分から2時のあいだ)は混雑している。マクドナルドなどが入っている建物の隣には、書籍店と複写センターがある。また、ATMもキャンパス内の2箇所に設置されている。ニュー・キャンパス、グリーク・キャンパス、さらにザマーレク地区の学生寮にはAUCの書籍店が設けられており、カイロ・アメリカン大学出版会(AUC Press)から出版された書籍も買うことができる。ニュー・キャンパスとグリーク・キャンパスでは置かれている本が微妙に異なっているが、筆者の研究領域であるイスラーム思想研究に関する書籍としてはグリーク・キャンパスの方が本揃えは良く、床面積の点でもグリーク・キャンパスの書籍店の方が広い。書籍店は誰でも訪れることができるが、セキュリティチェックのためにパスポートを提示する必要がある。グリーク・キャンパスを訪れる際には、タハリール広場や市内の状況について最新の情報を入手し、気を付けて訪れていただきたい。

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図書館の外観

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2階の閲覧室と書籍

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3階の貴重書閲覧室のカウンター(カバンを預けて中に入る)

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貴重書閲覧室の内部(ヘルプ・ディスクが右手にある)

 

図書館ウェブサイト http://library.aucegypt.edu/
入館・閲覧に必要なもの 大学(あるいは研究機関)からの紹介状、パスポートとそのコピー、利用料金150ドル
開館日時 http://library.aucegypt.edu/about/hours.htmを参照