【世界の図書館から】アラブ連盟図書室

アラブ連盟図書室
The League of Arab States Library

図書室全景

日本貿易振興機構アジア経済研究所
能勢美紀

筆者は、9月にカイロのアラブ連盟本部で開始されたラウンド・テーブル“Education and Human Development for Sustainable Development in the Arab Region”(※)に出席した際、アラブ連盟本部建物の別フロアに位置する図書室を視察する機会を得た。アラビア語もできず、アラブ地域を専門とするわけでもない筆者がアラブ連盟図書室について紹介するのは大変恐縮であるが、筆者の知るアラブ研究者のほとんど誰も当図書室のことを知らなかったことから、少しでも役に立てればと、本稿において、筆者の見聞きした情報をお伝えしたいと思う。なお、アラブ連盟図書室にはわずか一日滞在したのみで、司書(librarian)の方に案内していただいた。ここでお伝えするのは主にこの時の司書の方から得た情報である。

※本ラウンド・テーブルは「平和維持と紛争予防のためのアラブ諸国のキャパシティ・ビルディング」を目的とするアラブ連盟、日本政府、国連開発計画(UNDP)の共同事業の一環であり、アジア経済研究所も日本側のカウンターパートとして関わった。

◎来歴
アラブ連盟とは、アラブ諸国の独立と主権擁護を目的として、1945年にエジプトが主導し、シリア・レバノン・イラク・ヨルダン・サウジアラビア・イエメン(イエメン王国、1962年に共和国革命によりイエメン=アラブ共和国)の7か国によって結成された地域協力機構である。その後、パレスチナ解放機構(PLO)の加盟や、南北イエメンの統一を経て、現在、加盟国は21か国と1機構(PLO)となっている。

アラブ連盟図書室はアラブ連盟の発足(1945年)とほぼ同時期に設置された歴史ある図書室である。設置当初はアラブ連盟の委員・職員のための図書室だったが、今は一般にも開放されている。現在、利用者の大半は大学生で、外国籍の留学生も多い。アラブ連盟の重要書類が一般に開放されている図書室で閲覧可能、という情報はあまり知られていないようで、研究者の利用は少ないという。しかし、アラブ地域の政治・国際関係の研究者にとっては資料の宝庫なのではないだろうか。閲覧スペースも十分にあるので、一日資料を見ながら過ごすことも可能だろう。アラブ連盟図書室はアラブ連盟の事務局の建物内にあり、開架の閲覧室が1フロア、それ以外に閉架書庫が1フロアある。

閲覧席。窓側の閲覧席は光が差し込んで明るい。

◎利用方法
特に事前申し込みは必要ない。ただし、アラブ連盟の入り口でセキュリティチェックがあり、身分証明書(パスポート等)の所持が必要である。

◎所蔵資料
アラブ連盟発足時からの議事録や決議類、写真等を全て保存している。他にも、第2代アラブ連盟事務局長であったアブドゥル・ハーレク・ハッスナーの椅子や、アラブ連盟に関する記事が掲載された新聞の切り抜きといった資料も所蔵している。

現在購読している資料は、アラブ連盟加盟国各国の出版物、新聞、雑誌で、資料は出版国別に配架されている。なお、収集対象は主として社会科学系分野の資料であり、自然科学系の資料は収集していない。

歴代の事務局長の写真がならぶ。

アブドゥル・ハーレク・ハッスナーの椅子。

様々な新聞からの切り抜きをあつめて綴じている。

資料は出版国別にブースのように仕切られ、配架されている。

◎デジタル資料
アラブ諸国の連帯意識と協調の歴史を後世に伝えていくため、アラブ連盟での会議議事録、決議類、写真といった重要資料については、2014年からアーカイブズ化プロジェクトが進められており、2020年をめどにウェブサイトで公開予定とのことである。詳細はアラブ連盟記録文書デジタル化プロジェクト(http://www.leagueofarabstates.net/ar/library/Pages/LasRetention.aspx)を参照してほしい。

アルバム。

署名文。貴重な写真や文書類のデジタル化が予定されている。

◎サブジェクト・ライブラリアン
サブジェクト・ライブラリアンはいない。ただ、アラブ連盟に関する文書・写真等について質問すると丁寧に詳細を教えてくれる。資料の分類方法や整理、配架の手順等も説明してくれるので、興味のある方は聞いてみると良いだろう。

◎カタログ・目録
冊子体の新刊案内・目録を作成しており、最近図書室が受け入れした資料について一覧することができる。新刊図書についてはウェブサイト(http://www.leagueofarabstates.net/ar/library/Pages/NewArrival.aspx)でも案内されている。

また、館内にOPAC端末もあるので、新刊以外の蔵書はそこから検索することができる。この端末からは一部の電子資料・画像も閲覧できる。OPACはオンラインでは公開されていない。

新刊案内。

◎〔補記〕近隣の資料所蔵機関
近隣の図書館として、エジプト国立図書館・公文書館(Egyptian National Library and Archives、以下エジプト国立図書館)がある。

国立図書館。

エジプト国立図書館・公文書館は、地中海沿岸の都市アレキサンドリアにある新アレキサンドリア図書館と並び、エジプトの学位論文の保存・公開機関となっているとのことで、多くの学生が過去の学位論文の閲覧・複写のために国立図書館を利用している。また、併設の無料ミュージアムもある。ミュージアムの規模は小さいが、パピルス文書やオスマン時代の古文書の展示、貨幣を始めとする道具類の展示、解説など、見応えがある。(余談だが、新アレキサンドリア図書館のミュージアムは倍くらいの規模であるが、有料である。)

アラブ連盟図書室ウェブサイト

http://www.leagueofarabstates.net/ar/library/Pages/default.aspx(アラビア語)

住所: 1, Tahrir Square, Cairo, 11624, Egypt

電話:+20 2 2574 0404

FAX:+20 2 2574 0331

Email: infolib.dept@las.int

アクセス

最寄り駅は地下鉄のサダト駅。徒歩10分ほど。

開館時間:利用前に問いあわせること。

入館・閲覧に必要なもの
パスポート

(2020年6月24日)