コンテンツへスキップ

東京大学附属図書館アジア研究図書館
上廣倫理財団寄付研究部門
Uehiro Project for the Asian Research Library

COLUMN

【世界の図書館から】マレーシア国立図書館(マレーシア)

 

写真㈰正面(アンジュンベスタリ)

マレーシア国立図書館(マレーシア)

坪井 祐司

東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所研究機関研究員

概要

マレーシア国立図書館は、独立前年の1956年に開館したマレーシア最大の図書館である。図書館は、首都クアラルンプルの北部を走る幹線道路トゥン・ラザク通り(Jalan Tun Razak)沿いに位置している。周囲に劇場や病院等の公共・文化施設が並ぶ地区の一角にあり、マレー人の民族衣装の帽子の文様をかたどった屋根が印象的な建物である。行き方としては、公共交通を利用するのはやや難しいため(交通手段としては使い勝手のよくないバスしかない)、タクシーの利用をお勧めする。

 

 

利用

利用手続きはその場で済ますことができる。受付にパスポートを持参し、必要事項を記入した書類を提出すればその場で3年間有効の入館証を発行してもらえる(無料)。受付は、入って正面の建物であるアンジュン・ベスタリ(Anjung Bestari, 上写真)の1階にある。ウェブサイトから事前に必要な状況を登録しておくこともできる。

http://www.pnm.gov.my/english.php/forms/form/6

図書館は資料のデジタル化に力を入れており、さまざまなデジタルツールを用意している。登録すれば、デジタル化された資料を閲覧できるほか、ポータルサイトを経由して新聞社ニューストレーツタイムス(New Straits Times)や通信社ブルナマ(Bernama)など他機関の様々なデータベースにアクセスすることもできる。

http://www.pnmdigital.gov.my/

また、アンジュン・ベスタリには、スマート・ライブラリーと呼ばれる電子書籍の閲覧コーナーも設けられている。

 

 

所蔵資料

所蔵資料のうち、マレーシア関係の資料のコレクションは、マレーシアーナ(Malaysiana)と呼ばれる。それらは、受付のあるアンジュン・ベスタリではなく、その裏手にたつムナラPNM(Menara PNM)と呼ばれる建物に所蔵されている。この建物は6~11階が書架、閲覧スペースとなっている。それぞれの階の所蔵資料の概要は以下の通りである。

 

6階:マレーシア関連の定期刊行物(新聞・雑誌)

マレーシア関連の新聞・雑誌である。新聞については、33タイトルのマイクロフィルム9,000本あまりを含んでおり、マイクロリーダーが備えられている(1枚1リンギットで印刷が可能、1リンギットは2015年6月現在約33円)。所蔵タイトルについてはHPで確認できる。

7階:マレーシア関連の書籍

同じく、マレーシア関連の書籍である。人文・社会系の書籍にくわえて、理系のマレーシア語書籍も含まれている。

8階:地図

9階:法令、官報

政府関係機関の官報、報告書、統計などが所蔵されている。すべての年度がそろっているわけではないが、一部には独立前の植民地時代のものもある。

10階:貴重書

閲覧はできないが、植民地時代の書籍等が展示されている。

11階:マレー語写本

この階はマレー語写本センター(Pusat Manuskrip Melayu)となっており、16世紀~20世紀初頭までのジャウィ(アラビア文字表記のマレー語)による写本が所蔵されている。国立図書館により作成されたマレーシア国内の諸機関に所蔵される写本資料の目録もある(Katalog Induk Manuskrip Melayu di Malaysia(1993, Perpustakaan Negara Malaysia))。

資料の検索は、OPACを通じて行う。請求記号によりどこに所蔵されているかがわかる仕組みとなっている。各階は広くはないが、それぞれにスタッフが常駐しているので、見たい資料を所蔵する階の職員に相談するとよい。

 

写真㈪ムナラPNM

ムナラPNM

 

その他

アンジュン・ベスタリの地下に荷物預かり所がある(無料)。また、同じく地下には食堂があるが、軽食中心であまり本格的な食事はできない。

 

マレーシア国立図書館は大型の公共図書館という位置づけであり、利用者も地元の学生などが中心である。したがって、専門的な資料はそれほど多いとはいえないが、独立以降の公文書や新聞資料、前近代のマレー語写本などは研究者にとっても有用な資料であろう。

ただし、マレーシアにおけるそうした資料は一か所に集約されず、さまざまな機関に分散して所蔵されている。クアラルンプル市内では、国立文書館(Arkib Negara Malaysia、独立以前の植民地期の公文書、新聞など)、言語出版局(Dewan Bahasa dan Pustaka、マレー語の写本など)、マラヤ大学図書館(学術書や雑誌など)などが専門的な図書館を持つ。これに関しては、以下の日本語で書かれた資料案内もあわせて参照されたい。

 

  • 「マレーシアのジャウィ文献:文献の概観と研究工具の紹介」(西尾寛治、坪井祐司)『上智アジア学』20(2002)、pp.243-258

基礎情報

図書館ウェブサイト http://www.pnm.gov.my/
入館・閲覧に必要なもの パスポート
開館日時 火~土 10:00~19:00、日 10:00~18:00(月曜・祝日は休館)