国家図書館(台湾)
王紫
コロンビア大学東アジア研究科 博士課程 / 東京大学総合文化研究科 研究生
台湾国家図書館は、台北市中正記念堂駅のすぐ外に位置し、台北駅周辺から徒歩20分ほどで、アクセスは大変便利だ。私は2013年12月と2014年10月の2度にわたり、本館で資料収集を行い、主に古典籍資料を利用した。ここでは、善本書室や漢学研究中心の古典籍資料を中心に、本館の利用状況について紹介したい。
初めて訪問する場合は、パスポートと顔写真1枚を用意し、2階入り口のカウンターで利用証を作る。(写真がない場合は、パスポートで臨時入館証発行可。)入館する前にコイン不要のロッカーに荷物を預けられるが、簡単な荷物チェックを経てカバンを持ち込むこともできる。入館すると向かって左側に近3年の修士・博士論文、右側に参考書類が開架式で置いてあり、中央に資料の館内貸出・返却カウンターと、資料請求用のコンピュータがある。3階から上は専門閲覧室となり、3階に雑誌閲覧室・電子資料閲覧室、4階に善本書室、5階に政府関係資料閲覧室、6階に漢学研究中心などがある。入り口を出た1階にはコンビニとレストランがあり、館内には給水器もあるので、食事や水を持参していなくても特に困らない。また、1階には大きな自習室があり、資料利用者の座席確保と、自習スペースを必要とする学生の双方に配慮した、有意義な取り組みに見える。
閉架式館蔵資料の大部分は2階の総合カウンターで受け取ることになっており、資料の保存場所によって、「普通調閲」と「時段調閲」の2種類がある。前者は蔵書カタログから資料を検索し、閲覧オプションを選択すると、15〜20分ほどで資料が到着する。後者は固定された出納時間があり、また申込締切が閉館時間よりはるかに早い点が要注意である。普通調閲・時段調閲ともに3冊まで、合計6冊まで一度に請求できる。また、利用証を持っている場合は、訪問前にインターネットで申込を済ませると、時間を有効に使うことができる。ただし、一部の資料は2階以外の閲覧室で請求することになっており、蔵書カタログの詳細説明を参照する必要がある。
複写は基本的にセルフコピーで、3階の複写コーナーで100元または200元のカードを購入する。複写枚数が少ない場合は、身分証を預け、コピーした枚数分を後払いしてもよい。コピー・印刷ともに同じカードを使い、値段は1枚につき1元。これまで利用したことのある図書館の中で最も安く、当初は大変驚いた。コンピュータを持参する場合は、館内WiFiを通じて館内限定の電子資料にアクセスすることもできるが、GoogleやYahooなどのドメインにはアクセスできない(従って検索エンジンの利用が不便)。台湾政府の提供するWiFiにはアクセス制限がなく、館内からでも接続できるので、事前に空港や台北駅などにある旅遊服務中心にパスポートを持参し、アカウント登録をしておくと便利である。
次に、古典籍資料の利用状況について記しておこう。本館善本書室に所蔵されている漢籍(線装本)は、主に普通古籍と善本書に大別され、その利用形態は、(1)原本、(2)マイクロフィルム、(3)電子画像の3種類がある。マイクロフィルムと電子画像が存在しない場合や、研究上の必要がある場合は、普通古籍は申請表を提出後、1日の審査を経て原本を見ることができる。善本書は申請表の他に1ページ前後の研究計画書を添付し、最長3日間の審査日が必要となる。短期滞在で善本書申請予定の場合は、事前に研究計画書を準備しておくとよいだろう。マイクロフィルムは即時出納可能で、善本書室内のリーダーを使用する。電子画像は3階にある電子資料閲覧室でも見ることができるが、善本書室のコンピュータのほうが動作が早く、使いやすい。原本の複写はできないが、マイクロフィルム・電子画像ともに、前述のコピーカードでプリントアウトできる。ちなみに、私が訪問した時は善本書室に1つだけ、電子資料の1巻全体を通じて閲覧・プリントアウトできるコンピュータがあり(通常は巻中の各節ごとにしか表示できない)、他と比べて大変使いやすかった。電子画像を多く利用する場合は、館員の方に尋ねて検索・閲覧のコツを教わることをお勧めする。
四庫系列叢書や館蔵資料の解題・目録などは善本書室に置かれているが、古典籍関連の参考書の多くは、6階の漢学研究中心に集まっている。ここでは他にも各種影印叢書や、中国研究関連の新刊書コーナーもあり、使い心地がいい。また、特記すべきは、海外佚存古籍と呼ばれる影印本コレクションがあることだ。主に日本の国会図書館、内閣文庫、尊経閣文庫や、一部アメリカ・イギリス・中国などの図書館所蔵資料が元となっている。日本国内で利用できる資料が大部分とはいえ、その多くは珍本・孤本で、開架式で自由に手に取ることができるのは大変ありがたい。(なお、ほぼ同じ内容の影印本コレクションは、京都大学人文科学研究所図書室やプリンストン大学東アジア図書館にも存在するが、各館所蔵内容に多少の違いがある。)
最後に、本館の古籍電子化の取り組みについて紹介しておこう。近年の取り組みについて紹介してくださった黃文德氏によれば、国家図書館では1994年から古籍の電子化を進めていたが、大々的な電子化プロジェクトが始まったのは2002年からだという。今では館蔵古籍の多くが電子画像として見ることができるだけでなく、近年はアメリカの議会図書館や各大学図書館との共同電子化プロジェクトによって、他館所蔵の書籍画像も、国家図書館の古籍影像検索データベースに追加されつつある。また、国外の大学図書館にアクセスポイントを設置し、館内限定の画像資料を国外で提供する取り組みも進められている。2014年現在、欧米を中心に世界で約十箇所のアクセスポイントが存在する。電子資料が他所でも見られるようになり、利用者の足が遠のく心配はないかとの質問に対して黃氏は、まずは便利な研究環境を提供することを優先させるべきで、本館にどのような資料があるかを知ってこそ、実際に訪問しようという興味が湧くものだと答えられた。積極的に資料の公開、便利化を図るその姿勢には非常に共感を覚え、同時に一利用者として大変ありがたく感じた。
図書館ウェブサイト | http://www.ncl.edu.tw/mp.asp?mp=2 |
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入館・閲覧に必要なもの | パスポート・顔写真1枚 |
開館日時 | 総館:火〜土 9:00-21:00, 日 9:00-17:00
善本書室:火〜土 9:00-17:00 (土曜はマイクロフィルム及び予約済みの普通古籍のみ) 漢学研究中心:火〜日 9:00-17:00 その他各閲覧室については図書館のホームページ参照 |