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東京大学附属図書館アジア研究図書館
上廣倫理財団寄付研究部門
Uehiro Project for the Asian Research Library

COLUMN

【世界の図書館から】東南アジア研究所図書館(シンガポール)

東南アジア研究所図書館(シンガポール)
ISEAS Library

ISEAS外壁

日本貿易振興機構アジア経済研究所
土佐美菜実

◎来歴
ISEAS Libraryはシンガポールにある東南アジア研究所に併設された専門図書館である。東南アジア研究所は1986年に設立され、当該地域をフィールドとした社会科学研究の中心拠点であり、The Institute of Southeast Asian Studiesという正式名称からISEASと通称されてきた(2015年にシンガポール初代大統領の名前が名称の一部に加わりISEAS – Yusof Ishak Instituteに改名)。ISEAS Libraryはそうした東南アジア研究の最先端を長きにわたり支えている。

図書館出入口

◎所蔵資料
東南アジアにおける経済、政治、国際関係、文化などの社会科学分野に関する資料を幅広く所蔵している。モノグラフ、統計資料、レファレンス資料、地図、雑誌、新聞、そして学位論文が主な所蔵資料である。資料の言語は様々で、英語はもちろんのこと東南アジア各国・地域の現地語で書かれたものも充実している。また、書架を歩いていると日本語の学術書も数多く所蔵していることがわかる。

特筆すべき資料として、オーラルヒストリーがあげられるだろう。1973年にISEASで始動したオーラルヒストリー・プロジェクトで収集した貴重なインタビュー記録である。このプロジェクトは日本占領期から第二次世界大戦直後のシンガポールを経験した現地の人々の生の声を記録する目的で実施された。その後プロジェクトは次第に記録対象を広げ、政治や経済界における著名人の自伝的記録にまで及んだのである。2017年にはISEAS研究員による新たなオーラルヒストリー・プロジェクトが立ち上がり、独立後ミャンマーの発展に携わった人々の語りが記録された。これらのインタビュー記録は単なる個々人の実体験にとどまらず、当時のミャンマーの政治・社会的発展の様相を知るうえで重要な資料と言えるだろう。

こうしたインタビュー記録のほか、シンガポールおよびマレーシアの歴史上の重要人物によるプライベートな書簡も数多く所蔵しているのがこの図書館の特徴だ。例として、マレーシアの独立期に華人系住民の地位向上に貢献した実業家、Tan Cheng Lock(1883-1960)があげられる。ISEAS Libraryには彼が創設したマレーシア華人協会(MCA)での彼の敏腕ぶりがうかがえる個人的な書簡の数々が所蔵されている。

◎利用方法
基本的に誰でも利用することができる。初回来館時のみ、簡単なフォームに必要情報を記入して登録を済ませる必要があるだけである。この登録自体は無料で行える。館内では資料の複写も可能だ。一方で、貸出サービスを利用する場合には別途、図書館貸出カードの作成が必要である。その際には登録・カード作成料としてSGD10を支払う。

シンガポールは一年を通じて暑い日が続くが、図書館内は温度湿度ともに管理されておりとても過ごしやすい。

また、入館時の登録とは別にISEAS Libraryのウェブサイトからメンバー登録(無料)していくつかのアラートサービスを受けることもできる。例えば、東南アジア各国・地域に関するインターネット上のニュース記事を、登録したユーザーに月曜から金曜まで毎日配信している。さらに、東南アジア関連のブログや雑誌記事の最新情報も週ごとに配信しており、関心のある地域の最新情報について随時チェックしておきたい場合には便利なサービスと言えるだろう。

図書館1F

◎デジタル資料
図書館が購読する電子ジャーナルやデータベースは来館することで利用が可能である。

◎サブジェクト・ライブラリアン
サブジェクト・ライブラリアンというカテゴリーはない。ただ、東南アジア研究を支援する図書館として、基本的にライブラリアンも当該地域に関する言語能力や情報収集の専門的知識を有している。

様々な言語の図書が並ぶ

◎カタログ・目録
ISEAS Libraryには所蔵検索データベースSEALionがある。ISEAS Libraryのウェブサイトのトップページには検索窓が用意されており、そこから直接資料を検索することができる。しかしながらISEAS Libraryのウェブサイトのトップページでは詳細検索ができないため、詳細検索を行う際にはISEAS LibraryのウェブサイトのトップページのSearch Library CatalogからSEALionのページ(https://iseas.sirsidynix.sg/)に移動して検索する。またこのデータベースは紙媒体の図書や雑誌、統計資料、地図、新聞あるいはマイクロフィルムを検索するためのツールであることに留意したい。「所蔵資料」で紹介したオーラルヒストリーや個人書簡、写真等の検索はもうひとつのデータベースSEALionPLUS(https://sealionplus.iseas.edu.sg/iseas/public/portal/aboutUs.jsp)から行う。したがって資料を探す際には資料種類によって適宜データベースを使い分ける必要がある。

地図の配架

◎食事処
図書館あるいは研究所の施設内には利用できる飲食施設はないため、外で食事をする必要がある。ISEASはシンガポール国立大学(以下、NUS)キャンパス内にあるため、敷地内には多くの食堂・レストランがあり、食事に関して特に心配する必要はない。

◎近隣の資料所蔵機関
上述のとおりISEASはNUSのキャンパス内に位置しているため、NUSの各図書館(中央図書館、中国語図書館など)へのアクセスも容易である。

◎その他
図書館内には数々の展示スペースがある。現在のISEASの正式名称にもなっているシンガポール初代大統領ユスフ・イシャークの生涯とシンガポール建国の功績を紹介したユスフ・イシャーク・ギャラリーや、カンボジアのアプサラ機構との共同研究によりシンガポールで行われた考古学調査における貴重な出土品も展示されている。

東南アジア研究所図書館(シンガポール)ウェブサイト

https://www.iseas.edu.sg/library/iseas-library/

住所: 30 Heng Mui Keng Terrace, Singapore 119614

電話:+65 6870 2439

Email: kutuphane@tbmm.gov.tr

アクセス

NUSのケントリッジ・キャンパス内に位置する。シンガポールの市内中心部から公共交通機関を利用したアクセス方法はバスが最も簡単である。10, 30, 51, 143, 183,188, 200番と表示のあるバスに乗車し、Opp S’pore Science Pk IIで下車したら歩いて10分弱で到着する。ただし、市内のどこからバスに乗るかにもよるが、たいていの場合は1時間ほどかかるので注意が必要である。シンガポールの公共交通機関に不慣れな場合には、タクシー、またはGrabなどの配車アプリサービスを利用するとおよそ20分で到着するのでおすすめである。その場合、料金はSGD12ほどかかる。
あるいは、NUSキャンパス内の無料シャトルバス(A1, A2, BTC1, D1)でアクセスすることも可能だ。

開館時間:
月曜~木曜8:00~17:45
金曜8:30~17:15
土曜・日曜・祝日休

入館・閲覧に必要なもの:
パスポートなどの身分証明書(初回登録時のみ)

(2020年6月29日)