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東京大学附属図書館アジア研究図書館
上廣倫理財団寄付研究部門
Uehiro Project for the Asian Research Library

COLUMN

【世界の図書館から】華中師範大学図書館(中国)

華中師範大学図書館事情

矢久保 典良

慶應義塾大学大学院文学研究科史学専攻後期博士課程

 

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華中師範大学旧館

筆者は、2010年9月からの2年間、中国湖北省武漢市にある華中師範大学に留学させていただいた。華中師範大学は武昌南湖そばの桂子山という小高い山(丘)の上に位置している中国教育部直属の師範大学である(住所は湖北省武漢市洪山区珞瑜路152号、郵便番号:430079、電話番号:(086)27-67868359)。本大学は、文華書院大学部(1903年に創建され、1924年に華中大学に改名)、中華大学(1912年創建)、中原大学教育学院(1949年創建)を基にして、1951年公立華中大学が組織され、1952年に華中高等師範学校に改組され、1953年に華中師範学院に改名し、1985年には現校名である華中師範大学に更に改名され、現在に至っている。

本大学は、師範大学という分類に属しているが、文学院、教育学院、歴史文化学院、外国語学院等の文系学部から物理科学と技術学院、数学と統計学院等の理系学部までを含む28の学院を持つ総合大学である。各学院の他にさまざまな専門分野の研究所と研究センター(あわせて約60)が設置されている。本大学の図書館は華中師範大学図書館をはじめ、各学院・各研究所にも各資料室・図書室を有している。そこで、本稿では留学中に主に利用していた大学図書館、中国近代史研究所文献中心(文献センター)と東西方文化交流研究中心・文献中心(東西方文化交流研究センター・文献センター)を中心に、本大学の図書館事情についてご紹介したい。

 

華中師範大学図書館は新館(総館)と旧館によって構成されている。筆者が留学を開始した2010年当時は本館(現旧館)と東館の2館体制であったが、新館を建設している最中であり、旧館と東館から新館への移行期間であった。本図書館新館は地上9階、地下1階(部分的に地下2階もある)であり、中文閲覧室、中文開架式書庫、外文閲覧室、中文報刊閲覧室、古籍特蔵閲覧室などの閲覧室や自習室を備えている。基本的には開架式の一般的な大学図書館である。図書館の利用者は、資料の貸し出しや閲覧を目的とするだけではなく、閲覧室や自習室に自主学習しにくる学生でいつも混んでいた。

本館の所蔵資料は中国語図書、外国語図書や定期刊行物を含めて総計249万冊あり、デジタル資料に関しては電子書籍を104万冊、中文データベースを37種、外国文データベースを43種持っている。その中には「華大文庫」、「桂子文庫」、「中国農村問題研究文献数据庫」(中国農村問題研究文献データベース)、「我博士硯士論文全文数据庫」(本大学の博士論文・修士論文全文データベース)などといった本大学が独自に作成したデータベースも含まれている。また公式ホームページの情報によると、館蔵の古籍図書は9105種、111779冊(その中に善本書455種、3511冊を含む)を所蔵している。これらの所蔵資料について、本館のウェブサイト上の蔵書目録によって検索することができる。

ただし、民国期や社会主義時代の書籍時代の書籍は閉架書庫にあり、一部は公開されていなかった。大学図書館の概況は上述のようである。旧館は中華式の重厚な建築であるが、それに対して新館は開放的なガラス張りの建物であり、明るい雰囲気であったため利用しやすかった。

華中師範大学国際交流学院一号楼
華中師範大学国際交流学院一号楼

次に、中国近代史研究所文献中心についてご紹介したい。筆者は中国近現代史を専門としているため、留学中は本大学中国近代史研究所と後述の東西方文化交流研究中心で主に勉強していた。本研究所は本大学の西門近くにある国際交流学院一号楼の4階に位置している。本研究所とは、中国教育部人文科学重点研究基地に指定されていて、湖北をはじめとした華中地域における中国近現代史研究の中心的な大学研究機関の一つである。ここでは、辛亥革命史、中国の早期近代化や商会研究、博覧会史、郷村における手工業史、近代社会団体研究、教会大学史、キリスト教史などにおける高水準の研究がなされている。このような本研究所は国際交流学院一号楼の1階に本研究所文献中心という図書室を備えている。利用には中国近代史研究所か歴史文化学院への所属を示す身分証の提示が必要である。

武漢市をはじめとした湖北省の文史資料や新編地方志など湖北省に関係する蔵書や近年刊行されたものを中心とした影印版の資料集(会議録や定期刊行物等を含む)などの資料が充実している。本研究所の蔵書に関して、ウェブ上の目録によって確認することもできる。また、文献中心の一画には、野沢豊氏による一群の寄贈書が所蔵されているため、日本語などで書かれた文献も利用することが可能である。本図書室は所蔵資料を複写することが可能である。

 名称未設定4左写真:中国近代史研究所文献中心、右写真:中国近代史研究所名称未設定5

曇華林
曇華林

最後に、中国近代史研究所とともに利用していた東西方交流文化研究中心についてご紹介したい。東西方交流研究中心は中国近代史研究所と同じ建物である国際交流学院一号楼の6階に位置している。本研究センターは2001年に成立した大学付属の研究センターであるが、その前身は1994年に設置された本大学中国教会大学史研究中心である。前述のように、本大学の起源は1903年の文華書院大学部とされているが、その学校の基礎となる文華書院自体は1871年に米国聖公会によって武昌城内の曇華林に創設された英語名を「Boone Memorial School」と呼ばれるミッションスクールであった。

本大学は、宣教師が創った教会学校を前身としているため、教会大学に関する研究センターを有していていた。そのような研究センターを、教会大学史や宗教史研究を含む東西文化間の交流や国際学術交流を研究する機関へと発展的に改組したものが、本研究センターである。本研究センターの文献中心は、前述の本大学の前身と関係して、キリスト教関係をはじめとした宗教関係の資料(定期刊行物の影印本やマイクロフィルム版の資料を含む)を中心に所蔵している。本文献中心のウェブサイトで目録を検索することができる。本資料室は研究中心の事務室を兼ねているため、事務室の開室している間は利用可能である。また本資料室内の資料の複写も可能である。

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東西方交流研究中心

 

筆者は、本大学図書館や2つの資料室が、中国近現代史研究や宗教史研究を専攻している方々にとってとても有用な図書館であると考えている。それに加えて、両資料室のスタッフをはじめとした関係者の方々がとても親切に対応していただけたため、本大学の図書館や資料室を快適に使用することでき、本大学での留学生活を充実したものにすることができた。

図書館 華中師範大学図書館(中国)
図書館ウェブサイト http://lib.ccnu.edu.cn/
入館・閲覧に必要なもの 学生証
開館日時 新館・各閲覧室(古籍特蔵閲覧室以外)月~木、土、日 8:00~22:00 、金 8:00~11:40
古籍特蔵閲覧室 月~木 8:00~11:40 、14:00~17:10、金 8:00-11:40
個別の詳細は図書館のホームページを参照

 

図書館 華中師範大学中国近代史研究所文献中心(中国)
図書館ウェブサイト http://www.zgjds.org/index.jsp
入館・閲覧に必要なもの 学生証
利用には中国近代史研究所か歴史文化学院への所属を示す身分証の提示が必要である。
外部からの利用希望者が入館・閲覧に必要なものは不明であるが、中国近代史研究所か歴史文化学院の紹介状があったほうがいいと思われる。
開館日時 月~金 8:30~11:40、14:30~17:00
開館状況は留学中の2012年7月時点での情報。

 

図書館 華中師範大学東西方文化交流研究中心・文献中心(中国)
図書館ウェブサイト http://eastwest.zgjds.org/index.jsp
入館・閲覧に必要なもの 東西方文化交流研究中心事務室の開室時利用可(開室時間の目安:月~金8:30~11:40、14:30~17:00)
開館日時 留学当時、本大学に所属していたため、入館・閲覧に必要なものの有無は不明。