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東京大学附属図書館アジア研究図書館
上廣倫理財団寄付研究部門
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COLUMN

【世界の図書館から】湖北省檔案館(中国)

画像①湖北省檔案館

湖北省檔案館(中国)

矢久保 典良

慶應義塾大学大学院文学研究科史学専攻後期博士課程

 

筆者は2010年9月から2012年7月まで中国湖北省武漢市に留学していた。留学中には湖北省檔案館を利用させていただいていた。武漢市は長江と漢江によって漢口、武昌、漢陽の武漢三鎮と呼ばれる三地区に分かれているが、その中の武昌地区は省政府などの官公庁や武漢大学、華中師範大学や華中科技大学などの高等教育機関が立ち並ぶ、湖北省の行政と文教の中心的な地域である。本檔案館はその武昌のなかでも最も風光明媚な場所の一つである東湖のほとりに建っている。

湖北省檔案館付近の東湖の風景

2012年当時は地下鉄がまだ建設中であったため、留学先の華中師範大学からバスに乗って「洪山路口東一路」まで行きそこから歩いて通っていた(バス停から本檔案館まで5分から8分くらいであった)。公共交通機関を利用していく場合は、「水果湖」や「洪山路口東一路」などが最寄りのバス停である。

本檔案館に関する文書館訪問記(注1)などの文書館情報や『湖北省档案館指南』(注2)などといった檔案館ガイドもすでに刊行されている。それに加えて、筆者の留学は2012年7月までであったので、筆者の知っている情報はそれまでのものである。檔案館の公開状況や利用状況は随時更新されるので、現在の本館の利用方法などの状況は本稿で紹介するものと違うかもしれないことをご了承していただきたい。そこで、本稿は留学中の個人的な檔案館の利用体験として利用状況をご紹介したい。

「洪山路口東一路」バス停
「洪山路口東一路」バス停

湖北省檔案館は湖北省直轄の文書館であり、省政府及びそれに所属する行政機関に関する文書を保存・管理・公開している。本檔案館の状況に関する公式ホームページ上の紹介や檔案館のパンフレットによると、「民国檔案」(1928~1949年の民国時期の湖北省政府、省所属機関と公営・民営企業に関する「檔案」文書。全90の「全宗」(フォルダ)、約16.5万巻)、「革命歴史檔案」(1922~1949年の湖北省と隣接する省で形成された革命根拠地および中国共産党組織に関する「檔案」文書。全11の「全宗」、約1000巻)、「中南大区檔案」(1949~1954年の中南軍(行)政委員会及び所属の部(局)、処の「檔案」文書。全95の「全宗」、約6.6万巻)、「省直機関檔案」(1949から2010年の省委、省政府および所属の機関団体の「檔案」文書。全181の「全宗」、約27万巻)、「館蔵資料」(清末から2010年代の館蔵档案に関する新聞、定期刊行物、文献及び工具書。約6万冊が公開済み)という文書のジャンルで公開されている。所蔵文書の種類や内訳(「湖北省政府檔案」、「湖北省民政庁档檔案」など)などについては、前述の『湖北省档案館指南』でも紹介されている。本檔案館のウェブ目録はとても充実しており、所蔵資料を検索できる。その目録は主に「館蔵民国檔案」目録検索、「全省各地民国檔案」目録検索、「省直機関檔案」目録検索の三種類に分かれている。このウェブ目録を有効的に活用することで檔案館を訪れる前に、どのような資料があるのか、ファイル名や檔案番号を把握することができる。民国時期を専攻する筆者は、「館蔵民国檔案」目録検索を利用してから本檔案館を訪問した。また「全省各地民国檔案」目録検索は湖北省内の檔案館所蔵の民国期檔案の一部を横断的に検索することができる。このように、本檔案館は検索機能が充実している(他にも本檔案館のウェブ上で「辛亥革命目録」等の目録検索もできる)。個別の資料に関する所蔵状況に関しては前述の工具(ウェブ目録や『湖北省档案館指南』等)をご参照いただきたい。

次に、檔案館の利用方法に関してすこし見ていきたい。まず筆記用具やパソコンと貴重品以外はロッカーに荷物を預ける。ただしあまり大きくない手荷物は持って入室可能である。最初に本檔案館を訪問する時は、パスポートと中国国内の大学或は公的機関の「公印」のある紹介状を持参していく必要がある(私は武漢の大学に留学中であったので、日本から短期間で行く場合は事前に申請したほうがいいと思われる)。必要書類を提示し、申請書に記入して利用手続きを行う。そのあと、閲覧したい資料を請求する。前述のウェブ目録に事前にどのようなものがあるのか調べてきた場合は、そのファイル名と檔案番号を係員に伝える。また檔案番号や資料をその場で検索する必要がある場合は館内のパソコンを使って検索することができる。本檔案館はデジタル化も進んでおり、電子化された文書に関しては館内のパソコン上でデジタル化された資料を閲覧する。「湖北省政府檔案」や「湖北省民政庁檔案」はすでにデジタル化されているものも少なくなかった。まだデジタル化されていない文書は、現物を閲覧することができる。現物で閲覧したい資料がある時は、閲覧したい資料を係員に申請して、そのあと閲覧が可能な資料である場合は資料が出納される。資料が出てくるまでには数分以上かかることがあり、資料によってまちまちであった。閲覧した資料を返却したら次の資料を申請することができる。その日に閲覧し終えることができず、翌日も訪れる場合(または来館予定日がその最終利用日からあまり離れてない場合)は取り置いてもらうことができる。

複写したい資料がある場合は、受付けに複写を申請し、その資料が複写可能であった場合は複写することができる。ただし毎巻1/2~1/5といった複写可能な範囲に制限がある(A4・B4サイズは1枚1元。資料によっては閲覧費や保護費がかかることもある)。

筆者は民国時期を研究対象としているので、「湖北省政府檔案」、「湖北省教育庁檔案」、「湖北省民政庁檔案」などといった民国時期の文書を閲覧した。既見のかぎりではあるが、これらの文書は民国期の湖北省に関する研究をしている方々にとってかなり有効であると思える。また本檔案館は充実したウェブ目録があり、またデジタル化も進展しているためとても利用しやすかった。そして、閲覧室のスタッフの方々がとても親切に対応してくださったので快適に利用することができた。

(注1)川島真「浙江省檔案館・図書館,湖北省檔案館訪問報告」『中国研究月報』51巻2期、1997年、31-37頁。

(注2)湖北省档案館主編『湖北省档案館指南』中国档案出版社、2008年。

アクセス 住所:湖北省武漢市武昌区水果湖洪山路87号  郵便番号:430071電話番号:027-87233921
図書館ウェブサイト http://www.hbda.gov.cn/(湖北省檔案局(館))
入館・閲覧に必要なもの パスポート・紹介状(中国国内の大学あるいは公的機関の「公印」のあるもの)
開館日時 月~金 午前8:30~11:30、午後2:30~5:00(法定祝日を除く)