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東京大学附属図書館アジア研究図書館
上廣倫理財団寄付研究部門
Uehiro Project for the Asian Research Library

COLUMN

子どもたちの絵画に映るカンボジア社会―過去と現在

アプサラ機構 マラディ・オウム

2025年9月から2026年2月まで、京都大学東南アジア地域研究研究所(CSEAS)図書室にて招聘研究員として滞在した期間中、カウンターパートである土佐美菜実先生に、さまざまな図書館を訪れる際の助言をいただき、また調整をしていただいた。その一環として、2026年1月21日に東京大学アジア研究図書館を訪問し、田中あきさんとその同僚の方々にお会いする機会を得た。当日は非常に寒い一日であったが、田中さんが見せてくださった絵画の数々に触れ、私の心は温かさで満たされた。

それらは、2007年にカンボジア・バッタンバン州の3校―オー・ポン・モアン小学校、サムダック・チア・シム小学校、プレア・モニヴォン高校―に通うクメール人の子どもたちが描いた絵である。さらに田中さんは、2025年にCARDI(カンボジア農業研究開発研究所)の研究者であるペル・ドラ氏が収集し、東京大学大学院農学生命科学研究科・農学部附属アジア生物資源環境研究センター「地域資源評価研究室」の鴨下顕彦教授が関わった、同3校の児童・生徒による別の絵画作品を閲覧できるリンクも共有してくださった。

全体として、これらの作品は一見すると素朴でありながら、豊かな創造性に満ちていると感じた。子どもたちは線を用いて二次元的な形を描き、自分たちが「自然らしい」と感じる色でそれらを塗っている。中には、空間の遠近感や物の配置を巧みに表現した、才能を感じさせる作品もある。私が見たところ、2007年の作品群には、好きな景観・嫌いな景観に関して共通した視点が見られる。子どもたちは、家の周囲の風景、農村の集落、学校といった、穏やかな環境の中での生活を描いている。そこには山や田んぼ、野菜や家畜のいる農場、池、そして働く人々、観光する人々、遊ぶ子どもたちなど、さまざまな活動の場面が登場する。これらの絵は、人生を楽しむために必要なのは、実はごく基本的なものなのだという事実を静かに示している。

サムダック・チア・シム小学

一方で、一部の子どもたちの絵には、彼ら自身が経験したり、目にしたり、あるいは周囲から聞いたりしたであろう負の側面も表現されている。地雷、森林伐採、家庭内暴力、薬物使用、ギャンブル、衛生問題、汚染、狩猟、戦争―こうした要素が、彼らの関心や不安として描き出されているのである。これらの作品を見ていると、1990年代に子どもだった頃の私自身の記憶が呼び起こされた。クメール・ルージュ政権時代に残された地雷を恐れ、母はいつも「決められた道から外れてはいけない」と言っていた。また、私が暮らしていた村では、飲酒や喫煙、ギャンブルが日常的で、それが家庭内暴力につながることもあった。母はよく、「こんな状況を見たくない、経験したくないのなら、一生懸命勉強して、良い仕事に就きなさい」と私に言い聞かせていた。

オー・ポン・モアン小学校

2025年の作品に目を向けると、オー・ポン・モアン小学校の児童たちは、2007年と同様の問題意識を持ち続けている一方で、最近のカンボジア・タイ国境紛争の最中やその後に起きた出来事を描いた作品も見られる。また、他の2校の生徒たちは、環境問題により強い関心を示している。森林伐採、ごみ処理の問題、工場や交通機関による大気汚染、水質汚染など、人間の活動によって地球が苦しんでいる現実が強調されている。地球温暖化とその原因は、私たちの日常生活にも影響を及ぼし、気温の上昇や突発的な洪水を引き起こしている。ごみ問題もまた、重要なテーマである。

私は1990年代、シェムリアップの故郷ではプラスチックがほとんど使われていなかったことを思い出す。市場へはかごを持って行き、肉や野菜はバナナの葉やハスの葉で包まれ、お惣菜を持ち帰る時には自宅から器や皿を持参していた。しかし現在では、あらゆる商品が一つ、あるいは二つのプラスチック製品で包装されている。問題なのは、それらが使用後に至るところへ捨てられ、水中や大気中、あるいは地中にまで広がり、汚染や疾病、作物が育たなくなる土壌の劣化を引き起こしている点である。

プレア・モニヴォン高

数ある作品の中でも、私が特に心惹かれたのは、制服を着た子どもたちの絵である。そこには、子どもたちが将来なりたいさまざまな職業が表現されている。国の歴史を振り返れば、カンボジアの人々はあまりにも多くの困難を経験してきたし、生活の状況はいまなお変化の途上にある。そのような中で、若い世代が「より良い人生のために教育を信じている」姿を見ることができたのは、私にとって大きな喜びである。学問の世界における良い機会は、家族や国の発展に向けて、多くの側面で変化をもたらす力を持っていると、改めて感じさせられた。

オー・ポン・モアン小学校

dd.Feb.2026