学術専門職員 菅崎 千秋
2025年11月29日(土)、太田絵里奈特任助教による対話形式のアウトリーチ活動、シビルダイアログが世田谷代田 仁慈保幼園にて開催されました。昨年度、シビルダイアログに初めて参加して、楽しそうに学びながら手を動かす子どもたちの姿に感銘を受け、いつかわが子もと思っておりましたら、今回は同園に通っていなくても年長から小学校低学年の子どもでしたら参加できると聞き、親子で体験してきました。

5回目となる今年度のテーマは「せかいのお金」です。日本では、お札が新しいデザインに変わって間もないこともあり、子どもたちも興味津々のテーマです。
見て、触れて、観察してみよう!
「みなさん、お金は好きですか?」
そんな問いかけからはじまったシビルダイアログ。すぐに「はい!」とこたえる子もいれば、首をかしげる子もいます(もちろん私はすぐに挙手しました)。ただの紙切れのように見えるお金の価値は、誰がどのように保証しているのでしょう。子どもたちに問いかけます。さまざまな意見が飛び交いますが慌ててすぐに答えを出さず、まずは虫めがねを使って本物のお金をじっくりと観察することにしました。

「この人だれ?」
「この建物知ってる!」
「普通の紙のようだけどちがう気がする」
「なんか少しでこぼこしてる」
「キラキラして鏡のようなところもあるよ」
「光にかざすと見える模様もあるね」
お部屋のあちらこちらから、いろんな声が聞こえてきます。観察することによって、子どもたちは、お金にはさまざまな工夫が凝らされていることに気づきます。どうして工夫しなければならないのか、それはお金の価値と結びついていることを身をもって知るのです。子どもたちの「気づき」にそって、太田特任助教はさらにお話を続けます。お札は和紙でできているけれども、簡単にはやぶれない素材であること、文字や数字はいろんな人が認識できるようはっきりと記されていること、さらに数字や識別マークはインキを特に盛り上げて印刷されていること、お札に描かれた人物は、特定の思想や宗教に偏らないよう、学者や実業家、文化人が選ばれていること、裏面は表の人物と関わりがあったり、日本を代表する建築物や景観が選ばれていること…、恥ずかしながら大人の私も知らないことばかり。学ぶことが多くありました。
「SEKAI NO OKANE」ミステリーツアーズ
日本のお札をじっくりと観察した後は、ミステリーツアーズのはじまり、はじまり!
各家庭に一枚の封筒が配られます。なかに入っているのは、「せかいのお金」。実は、こちらU-PARLのスタッフから提供された世界のどこかで実際に使われている本物のお金なのです。大人にとっても初めて見るものがほとんどの珍しいお金ですから、子どもたちにとってはなおさらです。なぞの文字、なぞの人物になぞの建物、なぞのマーク、なぞの素材、そしてその価値さえもなぞ???…という、ミステリーだらけ!見たこともないお札に興奮しながら、さまざまな角度から観察します。
「初めて見るお札だけれど、日本のお札と似ているところがあるよ」
「例えばどんなところだろう」
「文字や数字がはっきりと記されている!」
「絵が細かい!」
「描かれているのは、多分、その国を代表する人やもの、動物なんじゃないかな」
「お金には、日本の『円』みたいに名前があるね」
「①数字 ②絵 ③お金の名前 ④真似がむずかしい」という「せかいのお金」に共通する特徴を、子どもたちは本物を実際に手に取って観察することで、自ら発見していきます。さらに太田特任助教より、かつては、貝や塩、お米にカカオ、そしてイルカの歯(!)までもがお金として流通していたという豆知識も教えてもらい、最後にお楽しみのオリジナルの通貨づくりに挑戦です。

切っては貼り、そして絵を描き…、同じように話を聞いて、お金を観察したのに、色も形も絵も、似たものは一つとないオリジナル通貨が完成しました。透かしやホログラムが入り、かつ立体的です。みなそれぞれに前半のお話を自分のものとして理解して、形にしたということがわかります。

ここで一つ、サンプルとしてわが子の作品をご紹介いたしましょう。青いお札で、上が表、下が裏です。表にはえらい(?)雪だるまの肖像とホログラム、裏は中央が雪だるま型に切り取られ、フィルムが貼ってあります。さながら透かしのようです。また雪だるまの学校のような絵とそのホログラムも表現されています。表も裏も、全体的に雪が舞い、数字はモールやペットボトルのキャップを使って立体的。これは一体…?と思って、本人からのコメントを見ると、「ブルブル」という通貨なのだそう!さらにレートや通貨記号まで記されています。この日は少し寒かったので、寒い国に思いをはせて通貨を考えたとのこと。日本と世界の本物の通貨を手に観察し、太田特任助教との対話から生まれた、オリジナル通貨。子どもの想像力って、またそれを引き出す太田特任助教の対話力ってスゴイと改めて感じました。

子どもたちが作った通貨は、複製できないという点では偽造防止につながりそうですが、製造コストがかかりそうです。そんなことを考えていると、アメリカで1セント硬貨を作るのに1セント以上費用がかかるので製造を中止するというニュースを先日目にしたことを思い出しました。「モノ」としてのお金がなくなることはないかもしれませんが、キャッシュレス化が進む昨今、どんどん「見えにくい」存在となっていることは確かです。それを実際に手に取ってじっくりと観察し、「お金ってなんだろう?」と親子で向き合った時間は、とても貴重なものとなりました。
* * *
さまざまな専門家が、子どもには自らのなかに「学びの種」がそなわっていると述べています。太田特任助教のシビルダイアログを体験すると、本当にその通りだと感じます。大人は先回りしたいのをぐっとこらえて、好奇心の「芽生え」をほんの少し手助けするだけで、子どもたちは大きく成長できるのです。そこで重要になってくるのが、ダイアログ(対話)なのではないでしょうか。「教える」という一方的な情報伝達ではなく、ともに考え学びを発展させる姿勢です。それによって、子どもだけでなく周りの大人へも関心が広まり、学びの輪が広がっていくのです。
このようにU-PARLでは、図書館の資料や研究を使って、保育園から高校生まで、子どもたちにアジアを身近に感じてもらえるような取り組みを行っています。研究を限られた学術的なコミュニティで完結させるのではなく、社会とのつながりを意識する視点は、太田特任助教だけではなく、U-PARL全体でも常に心がけていること。2026年も、U-PARLでは、いろいろなアウトリーチ企画を用意しております。みなさま、ぜひご期待ください!
27. Jan. 2026
