金子奈央
日本貿易振興機構アジア経済研究所・リサーチアソシエイト
サバ州立図書館概要
サバ州は、首都クアラルンプールのある半島部マレーシアではなく、ボルネオ島(カリマンタン島)北部に位置する。今回、紹介するサバ州立図書館の本館は、サバ州の州都コタキナバルにある。コタキナバル市内には、スリア・サバというショッピングモールの中にコタキナバル市分館があるが(以前、コタキナバル市役所近くにあった分館は閉館)、こちらに所蔵されているのは一般書、雑誌、新聞程度で、ショッピングモールの利用客の休憩所や、学生の勉強場所のようになっており、規模の小さいものである。その他にも、州内には地方図書館が3(ケニンガウ、タワウ、サンダカン)、地方分館が21(コタキナバル近隣ではプナンパン地区など)ある。現在、コタキナバル国際空港ターミナル2のあるタンジュンアル地区に、新しい図書館が建設中である。
サバ州は、英領マラヤであった半島部マレーシアとは異なる歴史的背景を持ち、北ボルネオとして、北ボルネオ会社(1881-1942)日本占領期(1942-1945)およびイギリス(1946-1963)の統治を受けた。その後、1963年9月16日に、マラヤ連邦、サラワク、シンガポールと共にマレーシアを結成し(シンガポールは1965年に独立)、サバ州となった。このような経緯から、特に植民地統治期の資料などを中心として、サバ州内でしか手に入らない資料があり、それらを所蔵している主な機関の一つが、サバ州立図書館である。
所蔵資料・利用方法
サバ州立図書館本館の建物は、8階建てのビルである。2、3階は一般開架になっている。ここにある児童書や雑誌、一般書、新聞が自由に閲覧できるようになっており、外への借り出しが可能なものもある。また、インターネット利用のできるパソコンもあり、3階カウンターで登録をすると利用することができる。日中は、中学生や高校生がグループになって試験勉強をしていることが多いので、これらのフロアは賑やかである。
行政資料や、専門書の大半は5階または6階に所蔵されている。5、6階は一般開架にはなっていないため、自由に入ることができない。ただし、入室、資料閲覧が厳しく制限されているわけではなく、3階のカウンターで必要事項(名前、パスポート番号、連絡先)を記入し、入室許可カード(自分が行きたい階が書いてあるもの)を受け取れば、誰でも入ることができる。パスポートなどを提示する必要はない。5階および6階の管理担当職員が不在の場合、入室が許可されないこともあるので、時間的余裕をもって行ったほうがよい。
5階は「政府出版物コレクション」「マレーシアーナ・コレクション」となっている。植民地時代およびマレーシア結成以降の各機関の年次報告書などの公文書が所蔵されている。6階は「サバ・コレクション」になっており、北ボルネオ会社時代やイギリス直轄領時代に出版された書籍、専門書、研究論文なども多く所蔵されている。その他にも、植民地時代や、マレーシア結成以降のサバ(北ボルネオ)に関する専門書、資料などが所蔵されている。分野は、自然科学系から人文社会科学系まで多岐に渡る。
5、6階に所蔵されている書籍については館外借り出しが認められていないため、目的の資料や書籍が見つかったら、その場で読んで記録を取るか(パソコンの持ち込みは可能)、コピーを依頼することになる。コピーは割高で、1枚20セント(外のコピー屋の相場が1枚5セント)、サイズはA4のみである。また、1冊につきコピーが許されているページ数が決まっているため、注意が必要である。コピーを希望する際、各階から3階の受付カウンターまで資料や書籍を持っていかなくてはいけないため、「館内での資料、書籍の移動」のための手続きをとらなくてはならない。とはいっても、各階に置かれているノートに、日付、名前、持ち出す資料の名前を記入するだけである。コピーには数日かかることがあるので(20年分の資料などをまとめてコピーする場合には、3日から1週間ほど時間がほしいと言われることもある)短期調査で行った場合には、帰国2-3日前などに行くと間に合わない可能性が高いので注意してほしい。支払いは、後払いでコピー完了後、枚数が確定した段階で1階のカウンターで支払う。コピー機の縮小や拡大の操作を誤るなどして、一部ページの端の情報が切れてコピーされていないことも頻繁にあるので、受け取ったら確認をしてほしい。
州立図書館に所蔵されている書籍、資料などのコレクションについては、オンラインで検索することができる。ただし、本館が所蔵できる許容量の問題で、古い時代の地図などの一部貴重な資料が近隣にある倉庫に保存されたままになっている。オンライン上では、本館に所蔵されていることになっているが、実際に見つからないものも多くあるので、各階を管理している担当職員に確認する必要がある。
近隣情報
州立図書館本館の近くには、徒歩圏内に州立文書館(Arkib Negeri Sabah)や国立文書館のサバ州分館(Arkib Negara Cawangan Negeri Sabah)がある。これらの文書館にも、北ボルネオ会社やイギリス直轄統治時代の文書、資料等が所蔵されているため、現地の資料収集のためには、州立図書館とあわせて利用することをお勧めする。州立文書館、国立文書館の分館については、事前に首相官房の経済企画庁が発行する調査許可証の取得が必要となる。以前は、サバ州の経済企画庁を通して調査許可を取得することもできたが、現在は連邦政府が一括して取りまとめている。ただし、中間報告、終了報告は、連邦および州の経済企画庁の両方に提出する必要がある。
アクセス
サバ州立図書館本館は、コタキナバル中心地から、プナンパン地区につながるプナンパン通り(Jalan Penampang)通りから少し入ったところにある。コタキナバルおよびその周辺の公共交通機関の便はあまりよくないが、一番安く図書館に行く方法はバスになる。
以前コタキナバル中心街の南端にあったワワサン・バスターミナルには、コタキナバル市内と郊外(近隣)を結ぶ近距離用バス、ミニバスが集まっていたが、現在は工事のため閉鎖しており、行き先ごとにバス停が中心部の各所に分かれてしまった。サバ州立図書館本館の近くを走るバスは、プナンパン地区行きのもので、プロムナードホテルおよびマリナコート前のバス停から出発する。プナンパン地区に行くバスは、ドンゴゴン(Donggongon)という町が終点である(オレンジと白のバスで、バスの番号は13番)。ドンゴゴン行きのバスには2種類あり、新道(Jalan baru: ジャラン・バル)経由と、コブサック(Kobusak)経由のものと2つあるが、どちらでも図書館近くは通る。バスに時刻表はなく、座席がすべて埋まったら出発となる。従って、時間帯やタイミングによっては、1時間近く待たなくては出発しないこともある(金曜日の正午近くはイスラムの金曜礼拝のため特に注意)ので、時間の予定を立てるのが難しい。
また、特定のバス停はなく、降りたい場所で(降車が物理的に不可能でない場所であれば)降りたいという意思表示(基本的には降車ベルを押す、もしくは降りますと声をかける)をすれば降ろしてもらえる。一方で、自分の降りる場所が、どこにあるのか把握できていない場合は、降りるのが難しい。サバ州立図書館本館は、道から少し入った場所にあるので、「図書館に行きたい」と言っても、バスの運転手や、運賃を徴収に来る車掌のような役割をしている人が、場所を把握しているかはまちまちである。州立図書館本館に行く場合、「アーキブ(Arkib:州立文書館)」または「タマン・リンバ(Taman Rimba:トロピカル・パーク)」と伝えて、着いたら教えてもらうように、運転手または車掌に予めお願いしておくとよい。
無事、州立公文書館またはトロピカル・パークの前で降ろしてもらえたら、トロピカル・パーク内を、坂を上るように抜けると、左手に州立図書館本館が見えてくる(特徴的な建物の形をしているので、詳しくは写真参照のこと)。平日は夜21時まで開館しているが、周辺のバスは夜19時半から20時頃終わる上、この時間帯は、あまり頻繁にバスが通らないので、帰宅時間には注意してほしい。また、周辺には流しのタクシーなども見つからないので、遅くまで図書館を利用する場合はタクシーに迎えに来てもらうように手配をしておく必要がある。最初に行くときは、コタキナバル市内からタクシーで行くのが一番便利であるが、コタキナバル市内には複数の図書館があるので、「図書館に行きたい」と言うだけでは通じないことがある。住所を見せるか、もしそれでもわからないようなら、「タマン・リンバ(トロピカル・パークでは通じない可能性が高い)の近く」と伝えるとわかってもらえるだろう。コタキナバル中心街から州立図書館本館までは車で10分程度の距離だが、サバのタクシーの初乗り料金は10リンギットのため、15リンギット程度が相場である。メーターは使ってくれない。
サバ州立図書館本館 (Ibu Pejabat Perpustakaan Negeri Sabah)
Jalan Tasik, Off Jalan Maktab Gaya, 88300 Luyang, Kota Kinabalu, Sabah, Malaysia
Tel: +60-(0)88-214828/ 231623/ 254493
Fax: +60-(0)88-230714
Email: hq.ssl@sabah.gov.my (返信はあまり期待できない)
図書館ウェブサイト |
http://www.ssl.sabah.gov.my/ |
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入館・閲覧に必要なもの |
入館について必要な手続きは特になし。 本の館外借り出しを希望する場合には、利用者登録が必要なのでパスポートと年間利用料50リンギット(外国人の場合)が要る。 |
開館日時 | 月~金:9:00-21:00 土・日:9:00-14:00 祝日:閉館 |
その他 | 現在の州立図書館の規則では、本館図書館の書籍や資料をコピーする際、1冊につきコピー可能なページ数に制限があるので注意が必要。 |