コンテンツへスキップ

東京大学附属図書館アジア研究図書館
上廣倫理財団寄付研究部門
Uehiro Project for the Asian Research Library

COLUMN

『壬辰戦争と東アジア―秀吉の対外侵攻の衝撃』あとがきにかえて

特任研究員 中尾道子

 

2020〜2021年度U-PARL協働型アジア研究プロジェクト7「壬辰戦争からみる16・17世紀東アジア」の研究成果がまとまり、このたび東京大学出版会から刊行された。

 

2019年4月にはじまるU-PARL第二期(2019~2023年度)の活動の柱である協働型アジア研究については、蓑輪顕量U-PARL部門長による刊行の辞に、タイトルに掲げた「壬辰戦争」の名称と本書刊行の経緯については筆頭編者である川西裕也氏の序章に詳しいので、そちらを参照いただくこととして、私からは研究班を代表して書中に表すことのできなかった関係各位への感謝の気持ちを記しておきたいとおもう。本来は書籍の末尾に記すべき「あとがき」を、ここに掲載することをどうかお許しいただきたい。

本書の企画は、川西裕也、中尾道子を発起人として2019年に始まった。当初は史料編纂所の研究プロジェクトと共催でシンポジウムを開催し、その成果を論文集として刊行する予定であったが、会場の予約までしたところでコロナ禍に入り、対面での開催は中止を余儀なくされた。これに代わるものとして2020年11月に立ち上げたのがオンラインによる「壬辰戦争研究会」である。同研究会はプロジェクトが終了した現在も続けられており、毎回、地域や分野を横断して活発な意見交換と討議が繰り広げられている。

プロジェクトの実施期間がコロナ禍と重なったため、史料調査が必須の当研究班の活動は多くの制約を受けたが、状況が深刻になる直前に行った佐賀の泰長院での調査や、蓑輪部門長のお引き合わせにより2021年年末に京都は本圀寺での調査が実現したことは僥倖であった。

そしてなにより、お忙しい中、時間をやりくりしてご寄稿いただいた執筆者のみなさま、専門用語が多く難解な原稿の翻訳を引き受けてくださった酒井雅代氏と中井勇人氏、調査にご協力いただいた方々、貴重な史料の掲載を許可してくださった関係機関各位には改めて深謝申し上げる。また研究会での討論の場で、示教を惜しまれなかった参加者のみなさまにも記して感謝の念をお伝えしたい。

川西裕也氏と後に編者に加わっていただいた木村拓氏はU-PARLのOBでもあり、両氏には、今回のプロジェクトのみならず、私がU-PARLの業務でさまざまな局面にぶち当たるたびに助言をいただくなど日頃から大変お世話になっている。本書はそうした関係に甘えて成り立っている面もあり、とくに筆頭編者を引き受けてくださった川西さんには研究会の運営から執筆依頼、原稿のとりまとめに至るまで、終始頼りっぱなしであった。2022年3月に設定した締め切りに、予想をはるかに超える数の原稿が集まったのも、川西さんの力によるところが大きい。原稿の下読みに入ってからは、鋭い読み込みにより、各論文の内包する重要な論点を汲み取り、本書の構成に筋道を立ててくださるなど、木村さんの力の大きさをあらためて思い知ることとなった。

さいごに、本書の刊行を快くお引き受けいただき、編者をつとめるのはこれがはじめてという我々3人を企画段階から辛抱強くお導きくださった東京大学出版会の山本徹氏、実質的な編集過程に入ってからは、タイトな刊行スケジュールにもかかわらず、大量の原稿を丁寧に見ていただき、的確な指示と見事なまでの原稿さばきで我々をゴールに導いてくださった中野弘喜氏には私の未熟のために最後まで手を煩わせた。ご迷惑のお詫びと感謝の気持ちを申し上げたい。また、編者のわがままに付き合ってくださり、校了が迫る中、短期間で魅力的な装丁に仕上げてくださったデザイナーの加藤光太郎氏にも厚く御礼申し上げる。

【附記】本書は2020〜2021年度U-PARL協働型アジア研究プロジェクト「壬辰戦争からみる16・17世紀東アジア」の研究成果公開費による刊行である。末筆ながら、公益財団法人上廣倫理財団のご支援に心から感謝申し上げる。

March 28, 2023