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東京大学附属図書館アジア研究図書館
上廣倫理財団寄付研究部門
Uehiro Project for the Asian Research Library

COLUMN

【世界の図書館から】トプカプ宮殿博物館附属図書館(トルコ共和国)

挨拶の門

トプカプ宮殿博物館附属図書館(トルコ共和国)

岩本佳子

大阪市立大学大学院文学研究科都市文化研究センター研究員

 

■お知らせ■

2015年3月16日 2015年2月6日から16日にかけてトプカプ宮殿博物館附属図書館、文書館を調査した際の最新情報を文末に追記しました。

 

筆者は2013年9月にトプカプ宮殿博物館附属図書館(以後、トプカプ図書館と略称)を利用した。ここでは、 その時の体験を基に、中東地域の歴史研究において非常に重要な写本等の資料を保有するトプカプ図書館の紹介と資料閲覧・ 複写申請の手順を紹介する。なお、トプカプ図書館は後述の通り、筆者が調査した2013年9月は再開館の直後であり、手続きやシステムが現在は変更されている可能性が高いことを了解いただきたい。事実、2014年現在、外国人研究者にはトプカプ宮殿博物館に加えて、文化観光庁、県の文化観光局への利用申請が必要となっている。

さらに、現在は所蔵資料のカタログ検索と複写申請のみができるトプカプ宮殿博物館敷地内にあるトプカプ宮殿博物館附属文書館(Topkapı Sarayı Müzesi Arşivi)(以下、トプカプ文書館)についても述べる。

 

宮殿 庭1宮殿 庭2

写真:宮殿庭。図書館はトプカプ宮殿博物館の中にあるため、日々観光客でごった返している。

概要

トプカプ図書館の正式名称は、トプカプ宮殿博物館附属図書館(Topkapı Sarayı Müzesi Kütüphanesi)という。その名が示すように、トプカプ図書館はトルコ共和国イスタンブルの観光の目玉地区であるスルタンアフメト地区の一大観光スポットであるトプカプ宮殿の構内に位置している。

トプカプ図書館は、 文化観光局公式ウェブサイトによると、写本1万8,000点強を擁する。

収蔵資料の冊子形態でのカタログが、カラタイにより発刊されている(詳細は下記参照)。また、利用登録が必要だが、トプカプ宮殿博物館のウェブサイトから、図書館収蔵資料の電子検索が可能。この他、トルコ国内の写本の横断検索サイトとしてはTürkiye El Yazmalarがある。しかし、このサイトのみならず、トルコ国内での写本の電子検索は、アラビア語であろうとペルシア語であろうとトルコ語訛りのアラビア文字ラテン文字転写で入力しないとヒットしないという代物であるので、当然のことではあるが紙のカタログもしっかり見ることを推奨する。

トルコで大量の写本を収蔵する図書館としては、スレイマニイェ・モスクに隣接したスレイマニイェ図書館(Süleymaniye Yazma Eser Kütüphanesi)が有名だが、トルコ各地の図書館に収蔵される写本の電子データの閲覧・複写申請がほぼスレイマニイェだけで済んでしまう昨今のトルコでも、トプカプ図書館の所蔵資料はスレイマニイェでは公開されていない。さらに、オスマン帝国の崩壊まで君主の居所の一つであり続けたトプカプ宮殿に所蔵される資料は、他の図書館や文書館に所蔵される資料とは一線を画すまさに「一級品」、「稀覯書」が多く、トプカプ図書館の価値は非常に高いと言えよう。

 

申請方法

2014年から導入された新規定によると、外国人研究者は、自筆署名入りの文化観光庁所定の研究許可申請書をJPEGファイル形式でEメールに添付してトルコ共和国文化観光庁文化遺産博物館局博物館部に提出する必要がある。申請フォームの入手および提出に関しては、Şakir DEMİROK氏に連絡されたい。連絡先は以下の通りである。

E-mail: muzearastirmalari@kulturturizm.gov.tr

Tel: (+90 312) 508 6135

Fax: (+90 312) 508 6113

また、トプカプ図書館所蔵の写本や文書館所蔵の文書の複写データを入手したい場合は、文化観光庁イスタンブル県支部に所蔵資料の複写申請を希望する旨を伝える。申請フォームの入手および提出に関しては、以下の連絡先に連絡されたい。

Adres :  İstiklal Cad. Atlas Pasajı No:131, Beyoğlu / İstanbul
Tel :+90 212 518 10 21 Dahili 223
Faks  :+90 212 518 12 79
e-mail :gokhan.dikici@kulturturizm.gov.tr (Gökhan DİKİCİ宛)

http://www.istanbulkulturturizm.gov.tr/

トプカプ図書館への利用申請については、まず、トプカプ図書館へ電話をかけ、自身の名前と身分、研究のために図書館所蔵資料を利用したい旨、連絡先(トルコ国内での携帯電話番号でよい)を伝える必要がある。電話番号は0212 512 0480(内線番号125)。 公式ウェブサイトから利用申請書をDLし、Eメール(宛先toplapisarayimuzesi@kultur.gov.tr.)にJPEGファイル形式で添付して利用申請を行うこともできるそうだが、忘れられる可能性が高いので電話や直参が望ましい。トルコ語が望ましいが英語でも可能。

 

宮殿に入る最初の門

挨拶の門

写真左:宮殿に入る最初の門。写真右:挨拶の門。この門の下に警備員のブース、手前にチケットブースがある。

 

職員からアポイントメント(トルコ語ではrandevu)が取れたら、観光客でごった返すトプカプ宮殿博物館のチケットブースを脇目に通り過ぎて宮殿第二の門の挨拶の門(Babü’s-Selam)向かって左側にある警備員詰所で「研究者であること、アポイントメントがあるので入構証(misafir kartı)を発行してほしい旨を伝えると、15分-1時間ほど待たされた後に許可が下りる。その後、チケットブースに戻り、身分証明書(パスポート)を提示すると、それと引き換えに入構証が発行され、無事に門の突破が可能となる。なお、申請その他でパスポートはこの後も使うので、コピーを用意しておくかパスポート番号をひかえておくと便利。

トプカプ図書館の閲覧室となっている建物は、宮殿の奥に向かう第三の門である幸福の門(Babü’s-Saadet)を抜けて左手の、Ağalar Camiiという往時のモスクを改装した建物になる。閲覧室の向かい側の建物には附属図書館の職員棟とミュージアムショップが入っている。閲覧室にカタログや目録閲覧用のPC、カード目録は2013年時点では置かれていなかったが、向かいの職員棟内に刊行カタログやカード目録、関連書籍は収蔵されており、その閲覧は可能。

トプカプ図書館閲覧室に入室後、所定の利用申請書類(müracaat)に名前、身分証番号、所属、研究目的、利用期間等を記入し、パスポートの写真付ページのコピー、所属を証明する書類、博士前期または後期課程在籍の場合は研究テーマを記した書類を添付して、写真室(追記中の写真参照)へ書類を持参して提出する。利用申請書はウェブサイトからDL可能。数日以内に館長の裁可が降りて登録番号(kayıt numarası)が発行されれば、資料の請求・閲覧・複写申請が可能となる。利用申請書は以前のスレイマニイェ図書館、現在はアタテュルク図書館やバヤズィト図書館で使われているものと同じであり、英語での記入も可能。以前は請願書(dilekçe)を書く必要があったことから考えると大幅に簡素化された。

登録番号が発行され次第、電話で連絡を頼んでおくことを勧める。ただし、往々にして連絡を忘れられてしまったり、館長が申請日の翌日に裁可していたにもかかわらず職員にそのことが伝わっておらず数日待ちぼうけを食らったあげく、電話では埒があかず、直接、館長室にうかがってやっと登録番号が既に発行されていたことが判明したりした経験もあるので、 適宜、電話や直参はした方がよいであろう。

正義の門 1

写真:正義の門。写真の正義の門を抜けた先の内廷部分にトプカプ図書室、館長室はある。

閲覧

前述の通り、閲覧室にカタログはないが、所定の申請書に請求番号を書いて請求すると、だいたい十数分で現物が出てくる。閲覧室への持参したパソコンの持ち込み、メモを取ることは許可されている。白手袋を渡され恭しく自分で資料をめくって、上質な紙の上に黒インクで美麗な書体で書かれ、 振り掛けられた金箔もペンの運びも生々しい写本現物をおがむ機会は、トルコではもはやほとんど出来ない経験になってしまっているので貴重である。

天井が高く暖房が動いていない閲覧室はやや寒い。観光地であるため少し外は騒がしい。チャイのサービスは職員専用である。

 

複写

持参したデジタルカメラでの資料撮影は不可。

所定の複写申請書に資料の請求記号と複写取得希望ページを書いて、館長室へ提出する。

料金は、テキストのみのページは1コマ2リラ(1トルコ・リラ=約55円)。細密画など美術的価値が認められるものページを複写する場合は1コマ10リラ。

 

複写物の受取は、挨拶の門から宮殿入ってすぐ右側の宮殿厨房の裏手にある建物の写真室(fotoğrafhane)で行う。トプカプ宮殿博物館がデジタルカメラで撮影したJPEGデータを焼いたCD-Rがもらえる。筆者は先方の好意でチャイを飲みながら写真室のPCで1枚1枚送りながら複写を取る箇所を確認させてもらえた。 この建物のまわりは警備員、ガイド、その他博物館で働く人々の休憩場になっているようでたくさんの人が談笑しており、勝手に出てくるチャイをすすりながら「日本で働くと俺はどれぐらい稼げるのか」という楽しい質問の相手ができる。

 

宮殿 庭4

写真:写真奥に見える建物が旧宮廷厨房であり、その裏手に写真室とトプカプ文書館がある。

 

写真室の向かいには、現在、カタログの閲覧と所蔵番号を伝えることで資料の複写申請のみができるトプカプ文書館がある。なお、収蔵資料カタログのウェブサイト上での検索サービスは2014年に開始された(http://topkapisarayi.gov.tr/en/palace-archive-documentまたはhttp://topkapisarayi.gov.tr/en/palace-archive-register)。

複写代の支払いは館長室地下の会計(veznecilik)で行う。現金リラ払いのみで外貨やクレジットカードの使用は不可。金額が大きい場合は指定銀行の文化観光局名義口座への振り込みを指示される場合がある。指定口座に現金を振り込もうとすると、当該口座が閉鎖されていて振り込みができないこともある。

 

宮殿 猫1

その他

宮殿の中は物価高のスルタンアフメト地区の中でも尋常ではないインフレを起こしている。例えば、チャイは1杯6リラ、チキンのドネル・ケバブとマトンのドネル・ケバブがどういうわけか同額の20リラと市価の4-5倍の値段がついている。水と軽食を持ち込むことをお勧めしたい。ただし、ボスフォラス海峡を宮殿の岬の高台から眺めながら飲むチャイは驚くほど格別ではある。

複写や申請待ちで時間が余ったり疲れたりした場合は、宮殿の中をウロウロするだけで充分に時間は潰れるだろう。また、宮殿が位置するスルタンアフメト地区は有数の観光スポットかつイスタンブルの書店の集まっているエリアの1つでもあり、本を物色するのも楽しい。

 

宮殿 1

 


追記

2015年2月6日から16日にかけてトプカプ宮殿博物館附属図書館、文書館を調査した際の最新情報を以下に追記する。

所蔵史料の複写を申請するのみの場合は、アンカラの文化観光庁への申請は必要ない。文化観光庁イスタンブル県支部とトプカプ宮殿博物館附属図書館もしくは文書館への申請のみで可能。

文化観光庁イスタンブル県支部へは、EメールもしくはFAXもしくは文化観光庁イスタンブル県支部へ直接赴いて必要書類を提出することが可能である。FAXもしくは直参での提出が望ましい。文化観光庁イスタンブル県支部の住所と連絡先は以下の通りである。

Adres :  İstiklal Cad. Atlas Pasajı No:131, Beyoğlu / İstanbul
Tel :+90 212 518 10 21 Dahili 223
Faks  :+90 212 518 12 79
e-mail :gokhan.dikici@kulturturizm.gov.tr (Gökhan DİKİCİ宛)

イスタンブル県庁文化観光局入口2

イスタンブル県庁文化観光局入口1

 

 

 

 

写真 イスタンブル県庁文化観光局入口

イスタンブル県庁文化観光局1

イスタンブル県庁文化観光局2

 

 

 

 

 

写真 イスタンブル県庁文化観光局の入る建物外観

イスタンブル県庁文化観光局は、イスタンブル新市街の目抜き通りであるイスティクラール通り沿い、在イスタンブルギリシア総領事館を過ぎてすぐの、映画館などが入っている商店街Atlas Pasajıの中にある。冬季は16時半まで営業。
持参書類は、身分と名前、連絡先、研究目的、複写を取りたい史料の所蔵番号、署名が入った嘆願書(dilekçe)とパスポートのコピーになる。申請から数日後に許可が発行される。

所蔵史料を閲覧するなど複写以外の作業を行うためはアンカラの文化観光庁へ申請が必要となる。メール、FAXでも利用申請は可能であるが、適宜、電話で申請の処理状況を確認することが望ましい。
提出書類は、身分と名前、連絡先、研究目的、複写を取りたい史料の所蔵番号、署名が入った嘆願書(dilekçe)とパスポートのコピー、文化観光庁所定の利用申請書になる。この利用申請書は、ベヤズィット図書館、アタテュルク図書館などで使われている利用申請書と同一のものであり、文化観光局に送付を願い出れば、Eメールの添付ファイルなどで申請前に取得することができる。

文責 岩本佳子(大阪市立大学都市文化研究センター研究員)

トプカプ図書館写本閲覧室外観

写真 トプカプ宮殿博物館附属図書館写本類閲覧室建物外観

トプカプ図書館外観

カタログ、カード、レファレンス類はこちらの建物に所蔵されている。
右はミュージアム・ショップ

写真 トプカプ宮殿博物館附属文書館建物外観

トプカプ文書館外観

写真 写真室(fotoğrafhane)建物外観

写真室外観

附属文書館の向かいに位置する。

図書館、文書館ともに利用申請書類はこちらに提出する。


目録

Topkapı Sarayı Müzesi Kütüphanesi Arapça Yazmalar Kataloğu

CiNii: BA10927063

全4巻・アラビア語で書かれたトプカプ図書館所蔵写本目録

 

Topkapı Sarayı Müzesi Kütüphanesi Türkçe Yazmalar Kataloğu

CiNii: BA79611453

全2巻・オスマン語(アラビア文字を主に用いて書かれたトルコ語)で書かれたトプカプ図書館所蔵写本目録

 

Topkapı Sarayı Müzesi Kütüphanesi Farsça Yazmalar Kataloğu: No. 1-940

CiNii: BA25539749

ペルシア語で書かれたトプカプ図書館所蔵写本目録

 

宮殿 海峡

アクセス 住所 T.C. Kültür ve Turizm Bakanlığı Topkapı Sarayı Müzesi Müdürlüğü, Sultanahmet, Fatih, İSTANBUL
Eメールアドレス toplapisarayimuzesi@kultur.gov.tr
TEL 0212 512 0480
FAX 0212 526 9840
図書館ウェブサイト http://www.topkapisarayi.gov.tr/(トプカプ宮殿博物館全体のウェブサイト)
入館・閲覧に必要なもの ・パスポート
・パスポートの写真入りページのコピー
・所属を証明する書類
・博士前期または後期課程在籍の場合は研究テーマを記した書類
※所定の申請用紙をウェブサイトからDLして持参可能
※事前に文化観光庁博物館部、文化観光局イスタンブル県支部への連絡が必要
開館日時 月水木金曜 9-12時・13時-16時(トプカプ宮殿博物館は火曜日閉館)
その他 所定の申請用紙はウェブサイトから利用登録(名前、所属、ユーザーネーム、パスワードなど)が必要であるが、博物館公式ウェブサイトからDL可能。
上記の利用登録が必要ではあるが、所蔵資料のカタログ検索もウェブ上から可能。