ガーズィ・フスレヴ・ベグ図書館入口。2014年オープンなので真新しい。
東京大学大学院人文社会系研究科アジア史専門分野博士課程
佐治奈通子
サラエボの旧市街、バシュチャルシヤ(Baščaršija)の一角に存在しているガーズィ・フスレヴ・ベグ図書館(Gazi Husrev-begova Biblioteka)は、バルカン最大級の図書館の一つである。1537年にボスニア県知事であったガーズィ・フスレヴ・ベイ(Gazi Hüsrev Bey)が、ワクフ制度に基づいて建設したメドレセに端を発する。1861年、トパル・オスマン・パシャ(Topal Osman Paşa)がボスナ・ヘルセック州知事として赴任し、2年後の1863年にジャーミー横に図書館を建設したことにより、正式に図書館として機能し始めた。長らく同場所に図書館が置かれていたが、所蔵資料や利用者の増加のために、1935年、ミリャツカ川南側のツァーレヴァ・ジャーミー(Careva Camii)近くに移動された。1990年代の内戦時には所蔵資料が焼失したのではと危惧されたが、資料は複数の場所に分散して保管されたため、ほぼすべてが焼失を免れた。その後、2014年に再びガーズィ・フスレヴ・ベグ・ジャーミー向かいにある同ワクフ敷地内に移設された。現在の建物は非常に近代的で、地下には博物館も併設されている。博物館への入館料は2マルク。
所蔵資料は約10万点の写本、出版物、定期刊行物、文書から成り、それらはアラビア語、オスマン語、ペルシア語、ボスニア語およびその他欧州諸言語で書かれている。このうち、10,050点以上が写本資料であり、その内容はイスラーム科学、哲学、数学、歴史、薬学、文学、天文学など多岐に亘っている。その他、豪華な装飾がほどこされた貴重なムスハフ、ボスニア出身のムスリムが記した写本、イジャーザ、約5000点のオスマン公文書(フェルマーン、ベラートなど)、約1600点のワクフ文書、88点のサラエボのシャリーア法廷記録、数点のボスニア他地域のシャリーア法廷記録などが所蔵されている。
現在、所蔵資料のカタログ化が進行中である。作業は「写本→出版物→文書」の順に行われており、現在写本に関してはほぼ作業が終了しているが、出版物・文書についてはまだ時間がかかる見込みである。同時にそれらのオンライン検索の準備も進められているが、作業は始まったばかりで、まだ不完全である。オンライン検索は館内のパソコンでのみ利用可能である(ホームページは現在工事中。いずれ外部からもアクセスできるようになるとのこと)。
● 写本
紙カタログ18巻が出版されており、その全てがPDF化されホームページから閲覧可能(http://www.ghb.ba/katalozi-rukopisa)。
● 出版物
紙カタログなし。現在オンライン検索でのみ作業進行中。年報”Anali”は、最新刊を除いて、ホームページから閲覧可能(http://www.ghb.ba/anali-ghb-biblioteke)。
● 文書
紙カタログなし。現在オンライン検索でのみ作業進行中。カタログ化がまだほとんど進んでいないため、閲覧したい文書を事前に確定させた上で現地に赴き、専門の図書館スタッフに直接聞く必要がある。
写本は1ページ1マルク。ただし、一部貴重書は1ページ1ユーロ、複写自体が不可能なものもある。雑誌・出版物は1ページ50フェニンガ(0.5マルク)。文書は1ページ1マルク。カメラでの撮影は禁止されている。受付奥にカフェテリアがある。軽食等はないが、コーヒー、チャイを飲むことができる。フリーWifiが利用できる。
◎参考文献
Jahić, M. (2013) Gazi Husrev-beg Library, Sarajevo.
基礎情報
図書館ウェブサイト
http://www.ghb.ba(ボスニア語)
http://www.ghb.ba/eng(英語)
住所
Gazi Husrev-begova 46, 71000 Sarajevo, Bosnia and Herzegovina
電話
+387-33-238-152
Fax
+387 33 205 525
Email
info@ghb.ba
開館日時
月曜~金曜8:00~16:00
土曜8:00~16:00
日曜祝日休
入館・閲覧に必要なもの
パスポートや許可証の提出は必要なく、レセプションで利用費用を支払えば良い。費用は利用期間ごとに異なっており、1日3マルク、1週間5マルク、1か月10マルク、6か月20マルク(学生10マルク)、1年30マルク(学生15マルク)となっている。以前はボスニア文化観光庁の許可証が必要であったようだが、現在は必要ないとのこと。閲覧室内の資料請求フォームに記入して図書館スタッフに提出すると、10分程度で資料を出してくれる。
アクセス
トラムバイ1番、3番のいずれかに乗り、バシュチャルシヤ(Baščaršija)で下車する。ガーズィ・フスレヴ・ベグ・ジャーミーの向かいにある、同ワクフ敷地内にある。
(2019年2月13日掲載)