【世界の図書館から】 国家図書館(中国)

総館南区外観

中原 理恵
京都大学人間・環境学研究科博士後期課程

北京の中国国家図書館は、白石橋にある総館(南区・北区)と、北海西側の文津街にある古籍館からなり、総館南区には国家典籍博物館が併設されている。

国家図書館の前身は中華民国期に入って設立された京師図書館で、1928年に国立北平図書館と名称を変更し、翌年には庚子賠款で建設した北海図書館と合併して、1931年に文津街に新館(現在の古籍館)を建造して移転する。1950年には国立北京図書館と名を改め、翌年北京図書館と再び改める。1987年に白石橋に新館(現在の総館南区)が建てられ、1998年に国家図書館と名称が改まる。2008年に総館北区が造成され、2014年には国家典籍博物館が開館し、現在に至る。

国家図書館の蔵書数は3200万冊、そのうち善本古籍は14万部200万冊あるとされる(2013年末)。国家典籍博物館は主に国家図書館の蔵書を用いて展示を行っている。

閲覧する文献の種類により、利用する場所が異なり、それぞれの閲覧室の開放日時に違いがあるため、詳しくはホームページ(http://www.nlc.cn/)で確認してほしい。

古籍館外観

所蔵本の検索には、ホームページの「馆藏目录检索」(OPAC)が利用できる。たとえば、下記の例であれば、「保存本」であるから、南区2階の総合閲覧室(基蔵本、保存本、工具書)に行けば閲覧可能で、開放時間は「周日-周五(日~金曜)」の9~17時ということになる。具体的な閲覧室の場所や開放時間は、ホームページの「读者指南」の「图示国图-馆内指引」及び「开馆时间」で調べられる。

図書館を利用する際は、入館前に「存包处」(一時預所)で貴重品や閲覧に必要な物以外の荷物を預け、図書館の入口で手荷物検査を受ける。水は携帯できるが(古典籍の閲覧室内には水も持ち込んではいけない)、飲食物は不可である。ノートパソコンを持ちこむ場合は、一時預所で専用のカバンを貸してもらえる。

館内の各閲覧室を利用する予定があるならば、入館後、「读者卡」(読者カード)の手続きをしたほうがよい。館内には、中文図書閲覧区、善本特蔵閲覧室、縮微文献閲覧室、普通古籍閲覧室といった種々の閲覧室があり、入室する際に読者カードの読み取りを求められる。また読者カードを持っていれば、出納予約や複写申請もできる。

読者カードの手続きは、館内の「办证处」(カード手続窓口)で申請用紙に必要事項を記入し、パスポートを提示すれば、即完了する。カード手続窓口は、総館(南区・北区)、古籍館それぞれに備わる。

OPAC画面

三位一体の国家図書館において、一般書は総館北区に蔵され、北区が子どもから一般利用者まで幅広く使えるよう役割を担っている。以下では、古典籍の閲覧について紹介したい。国家図書館の古典籍は、善本か普通古籍かによって大きく分かれ、善本は総館南区2階の善本特蔵閲覧室で、普通古籍は古籍館2階の普通古籍閲覧室で閲覧することとなる。ホームページのOPACで、閲覧を希望する古典籍がいずれに所蔵されているのか確認してほしい。検索結果の「館蔵」欄に「南区善本閲覧室」及び「古籍館普通古籍閲覧室」と表示される。

注意すべきは、2015年に善本に昇格した普通古籍が多数存在することである。心配ならば事前に電話などで確認したほうがよい。
善本閲覧室 電話:(+86) 10-8854-5344
普通古籍閲覧室 電話:(+86) 10-8800-3100

古典籍の閲覧室には水は持ち込めないので、持参していれば入口付近に設置されている専用の台に預ける。国家図書館に限らず、中国の古籍閲覧室ではこれが徹底されていると思う。日本の図書館で、書庫から借り出した古典籍を、ペットボトル等が置かれた一般の机の上で閲覧させているところがあるが、いかがなものか。

まず、古籍館であるが、ここに蔵される普通古籍ならば比較的容易に閲覧できる。昔に比べてずいぶん恵まれた状況になったことが、1980年代の中国で、多数の古典籍を調査された大塚秀高先生の思い出話からうかがえる(大塚秀高『増補中国通俗小説書目』「後書き」、汲古書院、1987年)。当時、国家図書館の普通古籍は柏林寺に置かれてあり、北海の古籍館から毎日一回車を出して書物を往復させていたという。「いざ閲覧となると、朝九時以前に申し込んだ場合のみ翌日、それ以後なら翌々日というのが普通であった」。最初は毎日車が出ていたのに、そのうち先方もうんざりしてきたようで、「車がなかった(没有車)と、書物がなかなか出なくなった」、とのいきさつが書かれている。

現在、私たちが普通古籍を利用する場合は、閲覧室のカウンターで閲覧申請書に必要事項を記入し、書庫から本が出てくるのを待つ。複写も可能だが、全体の3分の1以下しか申請できない(過去に申請した人たちの分も含めて3分の1以下とされる)。完成すれば、後日メールで、国家図書館の透かしの入ったデジタル資料として送られてくる。料金は刊行年、刊本か写本かの違いによって異なるので、現地で確認してほしい。

次に、善本であるが、善本の原本を閲覧するには、事前予約が必要で、時間に余裕を持って申請するほうがよい。とりわけ善本で、マイクロフィルムがすでにあるものについては原本を見ることは困難だと思う。マイクロフィルムならば直接善本閲覧室を訪問して、そのまま利用できる。善本、マイクロフィルムともに複写申請できるのは、普通古籍の場合と同じである。

善本閲覧室

善本の原本を閲覧したい時は、下記のメールアドレス(善本閲覧室 メールアドレス:sbyls@nlc.cn)に、善本閲覧希望である旨を伝えれば、折り返し申請書を添付してもらえるので、書類を作成して再送し、結果を待てばよい。申請願が通って閲覧できることになれば、所属先の紹介状が必要となる。

いざ善本を閲覧する段になると、警備員付きで本が運ばれてくる。筆者は2015年・2016年に善本を閲覧した際、白手袋を着用するよう指示された。斯道文庫の佐々木孝浩氏が、古典籍調査の際に手袋をすべきかどうかについて述べた文章があり、「手袋をして薄い料紙を捲るのは難行に等しい」(「書物の声を聞く 書誌学入門【5】」『書物学』5、勉誠出版、2015年)と書かれているが、その通りで、筆者も手袋を着用して古典籍を閲覧すべきではないと思う。余計な力が紙に加わって本が傷むからで、しっかり手を洗えばそれで十分である。ところが2017年に訪れた時は手袋着用の必要がなくなった。これはよかったと思っていたところ、2018年はどうやら、10本指の上半分を切り離した手袋を着用させているようである。聞くところによると、閲覧者の数が多く、手を洗っているのか確認することが難しいため、苦肉の策であるとのこと。手を洗わないなどといった、いいかげんな閲覧態度は、制限となって自身に振り返ってくることを認識したほうがよい。

閲覧態度について一つ加えれば、古典籍の装訂である線装本は、私たちが普段目にする洋装本とは異質のものである。連続絵本さながらに、ぱらぱらめくって目当てのページを探すなど論外で、古典籍を見るときは、手に持たず机に置き、本を重ねて見てはいけない。印刷部分が擦れてしまわないよう、なるべく文字のない部分に触れ、葉をめくるときは1葉ずつ丁寧にめくる。閲覧していないときは本を開けたままにしない。閲覧が終われば、もと通りの状態に戻して返却する。閲覧者の意識向上が求められると思う。

最後に、国家図書館のホームページでは、古典籍のデジタル画像が多数公開されている。「古籍」→「中华古籍资源库」に進めば検索できるが、画像を見るには利用登録する必要がある。読者カードを持っていればその情報が使え、なくてもメールアドレスで新規登録可能である。

各図書館の本には特有のにおいがあり(防虫剤)、国家図書館の本も独特のにおいがする。毎日でも通いたいけれども、そうもいかず、久々に訪れて本を手に取ると、国家図書館のにおいがして、なつかしい気持ちになる。一度、北京の中国国家図書館に足を運んでもらいたい。

基礎情報
図書館ウェブサイト
http://www.nlc.cn/ (中国語)
http://www.nlc.cn/newen/ (英語)

住所
総館(National Library of China)
中国, 100081, 北京市海淀区中关村南大街33号
#33 Zhongguancun Nandajie, Hai Dian District, Beijing, 100081, China

古籍館(NLC Library of Ancient Books)
中国, 100034, 北京市西城区文津街7号
#7 Wenjin Street, Xi Cheng District, Beijing, 100034, China

電話
+86 10 88545426

アクセス
総館 :地下鉄4号線・9号線の国家図書館駅の目の前。

古籍館:地下鉄4号線の西四駅を下車し、D出口を出て、文津街を東に向かって徒歩約15分。詳しくは、ホームページ上の「读者指南」の「图示国图-馆外指引」に地図や交通機関などの情報が載せられている。

(2019年2月13日掲載)