U-PARLでは、東洋文化研究所図書室との共催により、下記の要領でアジア資料目録作成ワークショップ:チベット語編を開催しました。ここに報告を掲載いたします。
【日時】 2018年7月27日(金)14:30〜17:00
【会場】 東京大学東洋文化研究所 3階大会議室
【趣旨】 様々な文字体系をもつアジアの諸言語の資料を図書館OPACに登録したり、NACSIS-CAT上で書誌レコードを作成したりするには、目録規則やコーディングマニュアルの知識に加え、外国語や現地の資料に関する様々な知識やツールが必要ですが、人材の流動性などの理由により、そのノウハウが蓄積・継承されないことが課題となっています。
U-PARLは、東洋文化研究所図書室との共催により、組織や機関の枠を越えて研究者とライブラリアンが協働する場を設け、多言語目録作成のノウハウや課題を広く共有することを目指し、アジア資料の目録作成に関するワークショップを開催しています。第2回はチベット語資料を扱いました。
【プログラム】
(1) 「趣旨説明」徳原靖浩(U-PARL)
(2) 「チベット語資料の概要と目録作成」浅井万友美(東京外国語大学オープンアカデミー講師)
(3) 目録作成に関するQ&A、ディスカッション
【実施報告】
大学・研究機関の図書館員を中心に20名の参加がありました。
はじめに、徳原靖浩・U-PARL特任助教が趣旨説明を行いました。近年、目録作成の作業はアウトソーシングの対象として図書館員の業務と見なされなくなりつつあることに触れ、インターネット書店が購買者の趣味関心に基づいて商品を提供するためのメタデータと、体系的に蓄積された知識に基づいて図書館が提供する書誌や文献案内とは根本的に質が異なるということを強調しつつ、分野の専門家である研究者と目録の専門家が協働し、情報を共有する場が必要であると述べました。
続いて、チベット語研究者である浅井万友美氏を講師に迎え、チベット語資料の概要と目録作成に関するレクチャーが行われました。
まず、チベット語という言語の概要について、特に初学者が読み間違いやすい文字や、音節の構造、基字の見つけ方について、丁寧な解説がなされました。次に、目録を作成する上で、資料の理解に欠かせないチベット語資料の特徴について、特に、標題紙と見出し、奥付のタイトルがそれぞれ異なる事例や、チベット語とサンスクリット語タイトル(チベット文字表記)が併記されている大蔵経の事例、「~というものである」という文章の形になっているタイトル表記の事例など、目録作成者が判断に悩むであろうものについて、行き届いた説明がなされました。
また、チベット語のコンピュータ入力や翻字の種類、目録作成に有用な参考資料の紹介など、図書館での作業に役立つ情報が盛り込まれたレクチャーに、参加者も熱心に耳を傾けたりうなずいたりする姿が見られました。
事前に参加者から募った質問では、NACSIS-CATに登録する際、タイトル等の分かち書きをどのようにするのかという点に多くの参加者が疑問を持っていることが見て取れました。ワークショップ後半のディスカッションの時間には、こうした分かち書きに対する各館の対応の仕方や、整理や選書における職員と教員の役割などについて参加者から意見があり、機関の壁を越えて情報共有が行われる良い機会となりました。