下の写真のような石像が道ばたに立っているのを見たことはないだろうか。中国風の衣冠をまとい、笏(シャク)をもった姿がエキゾチックな像だ。一見すると、昔の中国の石像のようだが、仏像のように見えなくもない。これはいったい何の像なのだろうか。
実は、この像、朝鮮の墓におかれる守り神の石像なのである。文官石という。文官石は、石燈や石柱など、さまざまな石造物とともに、墓におかれ、そこに眠る死者を見まもる役目をはたしていた。
こうした朝鮮の文官石は、戦前の日本で骨董品として人気を博し、朝鮮半島から大量に輸入されていた。文官石の枯淡なよそおいが歓迎され、茶室の庭先などにおかれていたようである。今でも日本では一定の需要があるようで、墓石業者がレプリカを造ったり、韓国で最近造られた原物を輸入したりしていると聞く。
いろいろなところに立っているので、見かけた折には足を止め、じっくり鑑賞してみてはいかがだろうか。
U-PARL特任研究員:川西 裕也
左:都内の公園に立つ文官石
中:小振りな文官石
右 石燈。こちらも墓に立てられていた
左:朝鮮時代の国王の墓。当時の一般的な墓に比べて、豪華なつくりである。右:朝鮮時代の墓。後方の土まんじゅうに被葬者が眠っており、その脇に文官石が並べられている。