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東京大学附属図書館アジア研究図書館
上廣倫理財団寄付研究部門
Uehiro Project for the Asian Research Library

COLUMN

【世界の図書館から】南京図書館(中国)

南京図書館1

南京図書館(中国)

関 智英

明治大学文学部兼任講師

中国で北京の国家図書館、上海の上海図書館に次ぐ規模を誇るのが南京の南京図書館である。その歴史は清朝末期の1907年に創立された江南図書館に遡り、国民政府時代の1933年に設立された国立中央図書館もその系譜に連なる。人民共和国後、図書館の再編成により現在の南京図書館となり、2007年の創立百年を記念して市中心部の大行宮に地上7階・地下1階の新館が建設された。

大行宮は清代の皇帝巡幸時の行在に由来する地名だが、この附近は六朝時代から政務の中心地であったと言われ、現に図書館地下1階の床の下に、梁代建康城内の遺跡を見ることができる(無料)。図書館の向かいの総統府は、その名の通り中華民国国民政府の中心であったが、清代にはここは両江総督が政務をとった場所で、洪秀全率いる太平天国が南京を都に定めた際も、やはりこの地に宮殿が置かれた。南京図書館は、言うなれば南京の歴史に寄り添った場所に建てられているのである。ガラス張りの館内上層階からは、附近の総統府・毘盧寺(旧中国仏教協会本部)はもちろん、遠く紫金山をも仰ぐことができる。

図書館にはこれまで特蔵部(市内虎踞北路)に別置されていた中華民国時期以前の書籍類も一括して収蔵されている。蔵書は総数910余万冊で、うち中華民国時期の出版物は70余万冊、それ以前の古籍は160余万冊に及ぶ。この南京図書館所蔵の古籍コレクション形成の陰には、戦時中日本占領地に成立した汪精衛政権で内政部部長を務めた陳羣の蔵書が核を成している。陳羣蔵書であったものには、「澤存書庫」「人鶴(陳羣の号)」の印が押され、その来歴を伝えている(陳羣の蒐書の詳細は拙稿「中国・南京図書館案内」『歴史学研究月報』633号、2012年9月参照のこと)。

さて南京図書館における閲覧方法は以下のとおりである。ここでは主に民国時期の書籍閲覧について説明する。

閲覧には閲覧証の発行が必要である。閲覧証の発行には手数料10元の他、貸出機能に応じて「押金(保証金)」が必要だが、民国以前の書籍・古籍はそもそも貸出ができないので、閲覧のみを利用する場合は普通閲覧証で十分であろう。普通閲覧証発行は、用紙に必要事項を記入し、パスポートと一緒に1階窓口に提出する。

閲覧室入室の前にはカバンはロッカーに預ける(無料)。ロッカーは1階に大型ロッカーがある他、各階のエスカレーター附近にも設置されている。閲覧室に飲食物・パソコンのソフトケースの持ち込みはできないので、ロッカーに入れておくと良いだろう。

 民国時期の書籍の閲覧は、4階の民国文献閲覧・方志曁江蘇文献閲覧室、古籍は5階閲覧室で行う。ただ、民国時期の書籍も5階で閲覧を求められる場合がある。閲覧室に入ったら、カウンター上にあるバーコード読取装置に閲覧証のバーコードをかざす。

室内には『江蘇省誌』を筆頭に近年出版された江蘇省内各行政区の地方誌、地名録が揃う。江蘇省各県市の事前調査などには便利な場所である。また、『民国叢書』『申報』『盛京時報』『民国日報』といった新聞・雑誌や、『国民政府公報』『偽満洲国政府公報』等各種影印本も配架されており、自由に閲覧できる。

室内には蔵書検索のためのパソコンも数台置かれているが、南京図書館のホームページで蔵書が確認できるので、訪問前に事前に必要な文献の所蔵を確認しておくと良いだろう。

4階の閲覧室は北西方向に面しており、隣には南京江寧織造博物館が見える。パソコンの持ち込みは認められており、室内のコンセントも利用することができる。

民国時期に発行された原本の閲覧であるが、閲覧は1日5冊までと制限されている。カウンターに置いてある名刺大の申請用紙に必要事項を記入し、パスポートと一緒に渡す。パスポートは、閲覧中はカウンターで管理されており、本を返却した際に返却される。

本は普通10分程で届けられる。この際、破損している、あるいは本棚が壊れている、といった理由で閲覧できない本がかなりあるので注意が必要である。南京まで足を運んで閲覧できないと知った時の悲しみは大きいが、これだけは実際に申請してみなければわからない。ただ、申請した書籍の中に閲覧できないものがあった場合は、5冊になるまで何度でも申請は可能である。係員が持ってきた書類に受け取りのサインをして本が渡される。

コピー(電子複写)は認められていないが、デジタルカメラによる撮影が認められるようになった点が古籍部時代と異なる。ただ撮影については1頁につき数元を支払う。この価格は書籍の発行年代によって異なるということであったが、1940年代であれば最低でも5元/頁ということであった。

 食事だが、図書館の正面地下には大型ショッピングセンターがある(地下に大娘餃子あり)。また図書館北側、太平北路に沿って民国時期の建築をイメージした「1912」というレストラン街がある(値段はやや高め)。より安く済ませたい人は、太平北路を西側に並行して走る碑亭巷に行けば、牛肉麺などを扱う庶民向の食堂がお勧めである。

南京図書館1南京図書館北口(総督府側入口)

南京図書館21階にあるモニュメント

南京図書館3図書館より紫金山を背景に左より、総統府・毘盧寺・中央飯店を望む

アクセス 住所:中国江蘇省南京市中山東路189号
総統府対面(バス停では総統府あるいは大行宮下車0分、地下鉄2号線大行宮下車0分)
郵便番号:210002
電話:84356000
図書館ウェブサイト http://www.jslib.org.cn/
入館・閲覧に必要なもの 閲覧証(パスポートを提示して作成する。9:00~17:00)
開館日時 総合閲覧室:月~金 9:00~21:00、休日 9:00-17:30

その他閲覧室:月~日 9:00-17:30

その他 中国の図書館なので、その時々で規則が変更される可能性はある。閲覧には余裕を持った日程を組んだほうが良いだろう。