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東京大学附属図書館アジア研究図書館
上廣倫理財団寄付研究部門
Uehiro Project for the Asian Research Library

COLUMN

イスラーム写本横断検索サイトFIHRISTのご紹介

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U-PARL特任研究員 須永恵美子

イスラーム地域の歴史を研究する際に「写本」を使うことがあります。

写本とは手書きで複写した本のことで、印刷の技術がなかった時代にわざわざ書道家が書き写すぐらいですので、貴重で価値のある資料が多いです。イスラームの聖典であるクルアーンや預言者言行録(ハディース)はもちろんのこと、アラビア語やペルシア語、オスマントルコ語の法学書、神学書などが何度も書き写され、写本として現在まで残されています。
写本には、挿絵や扉絵、ページの縁に幾何学文様などの絵画が書かれることもあり、クルアーンなどでは特に豪奢な装飾が施され、写本芸術という美術研究の対象にもなっています。

ところがこの写本は、世界中各地の図書館や大学、モスク、マドラサ(宗教教育機関)、個人宅などに保管されており(もちろん現代に伝わらずに消失してしまったものも多く)、研究したい時代やテーマの一冊に出会うまでが一苦労です。近年は、大学図書館のデジタル化が進み、写本の所蔵状況やスキャンされた画像を閲覧できるようになりつつあります。

イギリスでは、ケンブリッジ大学が中心となり、FIHRIST(フィフリスト)というイスラーム世界の写本に特化したオンラインカタログを公開しています。

FIHRISTのウェブサイト

FIHRISTは、イギリスの大学図書館が所蔵するイスラーム関連写本の横断検索ができるサイトです。フィフリストفهرستとは、ペルシア語やウルドゥー語で目録や一覧を意味します。この共同プロジェクトは2009年にオックスフォード大学とケンブリッジ大学で始まり、現在はロンドンのアジアアジア・アフリカ研究の拠点であるロンドン大学東洋・アフリカ研究学院(SOAS)、中東・アフリカ研究で評価の高いスコットランドのセントアンドリュース大学など21大学が加盟しています。

FIHRISTでは、加盟大学の所蔵する、7世紀から19世紀まで、アラビア語、ペルシア語、オスマントルコ語、ウルドゥー語などイスラーム世界各地の写本、1万5千点以上横断検索することができます。写本のキーワードだけでなく、地域やテーマ、作者、言語などの詳細検索も可能です。

検索結果は、それぞれの写本の書誌情報(メタデータ)という形で出てきます。実際の写本の画像を閲覧するには、リンクされている各大学図書館に飛ぶ必要があります。書誌情報は、TEI/XMLによってデータのタグ付けを施されていて、複数の大学を横断でありながら、共通のスキームによって目録を作成している点が高く評価されています。

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U-PARLでは、FIHRISTを作成したケンブリッジ大学のヤスミン・ファギーヒー先生をお招きし、2月18日に講演会を共催予定です。詳しくはこちらをご覧ください。

February 10, 2023