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東京大学附属図書館アジア研究図書館
上廣倫理財団寄付研究部門
Uehiro Project for the Asian Research Library

COLUMN

IIIF画像の個別ページのリンク設定−「#uparl推し画像」で遊んでみよう!−

特任准教授 永井正勝

 

1.アジア研究図書館デジタルコレクションとIIIF

アジア研究図書館デジタルコレクションは、アジア研究図書館の提供するプラットフォームです。このプラットフォームで公開している資料の選別、写真撮影、メタデータ付与はU-PARLが行なっています。

アジア研究図書館デジタルコレクション(共用サーバ)
https://iiif.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/repo/s/asia/page/home

アジア研究図書館デジタルコレクションで提供している画像はIIIF(International Image Interoperability Framework:通称トリプルアイエフ)に依拠しています。IIIFとは、デジタル化資料の相互運用を効果的に行うことのできる国際的な枠組みあるいはその取り組みのことです。

相互利用や二次利用の利便性から、たとえば大学図書館や博物館における画像公開では、JPEGなどの一般に普及している規格ではなく、IIIFに準拠することが多くなっています。

ところが、利便性が高いと言われ、世界各地で普及しているIIIFですが、実のところ、一般ユーザーにとってIIIFは必ずしも便利なものではない、と私は考えています。というのも、IIIFの利便性を享受するには、利用者側にある程度の知識が求められるからです。IIIFはカスタマイズの自由度が高い反面、やや敷居の高い規格である、というのが正直なところでしょう。その一例として挙げられるのが、リンクの貼り方です。

誰しもが経験したことのあるインターネット・リンクのコピペ。IIIFでは、それが案外、厄介だったりします。もちろん、IIIFでもリンクのコピペが可能なのですが、アジア研究図書館デジタルコレクションにおけるリンクの設定には複数のやり方があります。また、同じIIIF画像を示す際でも、どのビューワを経由するかによって、URLが異なってくるのです。このような部分を捉えて、やや敷居の高い規格と書いたのですが、それは、IIIFの価値を減じるものではありません。むしろ、IIIFの使い方の解説があれば、もっともっと広く普及する企画であるのに、と思う次第です。

そこで本コラムでは、IIIFの使い方の一例として、アジア研究図書館デジタルコレクションの資料を対象に、IIIF画像のURL設定について解説することにします。#uparl推し画像 とセットでIIIFを楽しんで頂ければ幸いです。

本題に入る前に、まずはIIIF画像を確認してみましょう。

2.IIIF画像を見る

アジア研究図書館デジタルコレクションで公開されているIIIF画像を実際に見てみることにします。どの画像でもよいのですが、本コラムでは、私が担当した「エジプト学研究のためのデジタル資源/Digital Resources for Egyptian Studies」で公開している資料を扱います。

エジプト学研究のためのデジタル資源/Digital Resources for Egyptian Studies(共用サーバ)
https://iiif.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/repo/s/asia/dres?sort_by=created&sort_order=asc

このコレクションには、Denkmaeler aus Aegypten und Aethiopien(『エジプトおよびエチオピアの記念碑』)という資料が含まれています。この資料は、図版12巻に趣意書1冊を加えた、全13冊の大分なものです。このうち、図版の第2巻(Band 2)を開いてみましょう。

Denkmaeler aus Aegypten und Aethiopien. Band 2のURL
https://iiif.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/repo/s/asia/document/9a64ea1c-2840-6da6-1a3d-d722c88429e6

アジア研究図書館デジタルコレクションは、東京大学学術資産等アーカイブズ共用サーバ(以下、共用サーバと呼ぶことにします)にて公開しております。共用サーバにおける公開画面を開くと、黒色の背景の中に画像が表示されています。これがIIIF画像です(図1)。

 

図1:共用サーバ画面

 

中央に大きく表示されているのが、①選択されているIIIF画像です。その左側には、②サムネイル画像が画像番号ごとに示されています。画像番号は[1]から始まり、格納されている画像の数だけ付与されています。ちなみにこの番号は、書籍に振られているページではなく、格納されている画像に対する通し番号です。

3.IIIF画像のURLをコピペしてみる

それでは、実際にIIIF画像の個別ページのURLを取得してみましょう。

ここでは、Denkmaeler aus Aegypten und Aethiopien. Band 2の画像番号[29]「メムノンの巨像」を開いてみます。左側のサムネイルで[29]をクリックすると、[29]の画像が選択されます。

画像を選択したら、各自が使用しているブラウザーのアドレスバー(URLバー)でURLをコピーして、ワープロソフト等にペーストしてみてください。以下のURLが得られることでしょう。

(1)Denkmaeler aus Aegypten und Aethiopien. Band 2、画像番号[29]に対するアドレスバーからコピーしたURL
https://iiif.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/repo/s/asia/document/9a64ea1c-2840-6da6-1a3d-d722c88429e6#?c=0&m=0&s=0&cv=28&xywh=-1%2C-89%2C8176%2C6308

特にこだわりがなければ、このURLを使用すれば、リンクを貼ることができます。

しかしながら、このURLは少々長く、よくみると、先に確認したDenkmaeler aus Aegypten und Aethiopien. Band 2のURLに「#?c=0&m=0&s=0&cv=28&xywh=-1%2C-89%2C8176%2C6308」を付加したものとなっています。実は、この中にある「cv=28」が画像番号を示しているのですが、画像番号29を開いたはずなのに、28となっています。

この、番号の1つズレた長いURLは、それなりの理由があってこうなっているのですが、一般ユーザーからすると冗長に思われますし、なにかスッキリしません。そこで次に、もう少しスマートなURLをご紹介します。

4.IIIF画像の個別ページのリンク設定:共用サーバの場合

スマートなURLは以下の方法で取得します。

【ステップ1】資料URLを取得する
共用サーバ画像(図1)の右下に③URLが表示されています。このURLが、現在見ている資料のURLです。本稿ではこれを「資料URL」と呼びます。Denkmaeler aus Aegypten und Aethiopien. Band 2の資料URLは、次のようになります。

(2)Denkmaeler aus Aegypten und Aethiopien. Band 2の資料URL(共用サーバ)
https://iiif.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/repo/s/asia/document/9a64ea1c-2840-6da6-1a3d-d722c88429e6

まずはこの資料URLをどこかにメモしておきます。

【ステップ2】個別ページを開くための呪文を書く!
共用サーバにおいて、個別ページへのリンクを貼るには、「資料URL」の次に、「#?cv=」を書きます。この「#?cv=」を、個別ページを指定するための「開けゴマ呪文」と呼ぶことにします。その後、「開けゴマ呪文」の後に、「画像の順番」を記入します。以上のことを公式として書くと次のようになります。

「資料URL」+「#?cv=」(開けゴマ呪文)+「画像の順番

ここで注意しなければならないのは、「画像の順番」の指定です。実は、共用サーバにおいて、「画像の順番」は「0」から指定するという仕様になっています。それゆえ、たとえば画像番号[1]の「画像の順番」は「0」となり、画像番号[20]の「画像の順番」は「19」となるのです。この0スタートという仕様が、先に言及した画像番号のズレの原因となっています。

以上に述べたように、「画像の順番」は結局のところ「画像番号-1」となるので、先の公式は、以下のように書き換えることができます。

– 共用サーバにおける個別ページリンク
「資料URL」+「#?cv=」(開けゴマ呪文)+「画像番号-1」(0スタート)

それゆえ、画像番号[29]を表示させるためには、以下のものを入力することになります。

「資料URL」+「#?cv=」+「28

実例として、Band 2の画像番号[29]の個別ページの実際のURLを紹介すると、(3)となります。

(3) Denkmaeler aus Aegypten und Aethiopien. Band 2、画像番号[29]の個別ページURL(共用サーバ)
https://iiif.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/repo/s/asia/document/9a64ea1c-2840-6da6-1a3d-d722c88429e6#?cv=28

アドレスバーから取得した(1)と比べて、(3)はスッキリしたものになっています。

5.東京大学学術資産等アーカイブズポータルでの表示

アジア研究図書館デジタルコレクションのIIIF画像は、東京大学学術資産等アーカイブズポータル(以下、ポータルと呼ぶことにします)でも表示させることができます。

アジア研究図書館デジタルコレクション(ポータル)
https://da.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/portal/collection/asia

ポータルにおけるDenkmaeler aus Aegypten und Aethiopien. Band 2の資料URLは以下の通りです。

(4)Denkmaeler aus Aegypten und Aethiopien. Band 2の資料URL(ポータル)
https://da.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/portal/assets/9a64ea1c-2840-6da6-1a3d-d722c88429e6

次に、個別ページのURLを取得してみましょう。ポータルにてBand 2の画像番号[29]を選択したうえで、アドレスバーからURLをコピーすると次のものが得られます。

(5)Denkmaeler aus Aegypten und Aethiopien. Band 2、画像番号[29]のURL(ポータル)
https://da.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/portal/assets/9a64ea1c-2840-6da6-1a3d-d722c88429e6#?pos=29

(5)は、ポータルの資料URLに「#?pos=29」を付加したものとなっています。これを分解すると、「#?pos=」(開けゴマ呪文)+「29」(画像番号)になります。

つまり、ポータルにおける個別画像のURLは以下のようになるのです。

「資料URL」+「#?pos=」(開けゴマ呪文)+「画像番号」(1スタート)

おわかりだと思いますが、ポータルの場合、画像番号が1から始まるので、URLに入れる画像nの順番は、サムネイルに出ている画像番号と同一になります。

以上、(3)共用サーバを使用した個別ページのURLと、(5)ポータルを使用した個別ページのURLを確認してきました。両者は、同一のIIIF画像を表示したものですが、画像を表示させるためのシステムが異なるため、URLも異なっています。URLのスマートさと取得の容易さという点では、ポータルに軍配が上がりそうです。その一方、共用サーバの方には、コレクション全体を見渡し易い、という大きな利点があります。目的に応じて使い分けるとよいでしょう。

6.#uparl推し画像

最後に、Denkmaeler aus Aegypten und Aethiopienの中の私の推し画像を紹介します。

題材として挙げたBand 2の画像番号[29]がそもそも推し画像の一つなのですが、エジプト語言語学者である私としては、ヒエラティック写本を推しておきます。Denkmaeler aus Aegypten und Aethiopienにおいて、ヒエラティック写本はBand 12(第12巻)に収録されています。その中で、画像番号[39]-[42]が「シヌヘの物語」と呼ばれる小説のパピルス写本(紀元前1800年頃)です。その中から、縦書きと横書きの両方が用いられている画像番号[42]を推し画像に認定します。

永井選定 #uparl推し画像
Denkmaeler aus Aegypten und Aethiopien. Band 12、画像番号[42](「シヌヘの物語」)

共用サーバ
https://iiif.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/repo/s/asia/document/11e8e95e-93a7-8803-2093-7ad447b26ce7#?cv=41

ポータル
https://da.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/portal/assets/11e8e95e-93a7-8803-2093-7ad447b26ce7#?pos=42

画像番号[39]-[42]のパピルス写本は、現在、ベルリン・エジプト博物館(Staatliche Museen zu Berlin)に所属されており、P 3022という番号で整理されています。そのなかで、画像番号[42]に掲載されている部分は、Hという下位区分で整理されている箇所です。このP 3022 Hの部分は、本コラムの執筆時現在、ベルリン・エジプト博物館のWEBで確認することができます。

Hieratischer Papyrus mit der Lebensgeschichte des Sinuhe, Staatliche Museen zu Berlin
https://id.smb.museum/object/2048808

さらに言うと、本写本(画像番号[39]-[42])については、アジア研究図書館の所蔵する以下の書籍に付録するDVDにて高精細カラー画像を確認することができます。

Four 12th Dynasty literary papyri (Pap. Berlin P. 3022-5) : a photographic record with DVD
https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/opac_link/bibid/2003388851

紀元前1800年頃に書かれたパピルス写本の写真と、紀元後1840年代に写されたスケッチとをPCやスマホなどで見比べてみるというのは、Society 5.0の時代において、実に楽しいものです。

みなさまも、アジア研究図書館デジタルコレクションの中から推し画像を探し出して、よろしければ #uparl推し画像 のハッシュタグでTwitterでご紹介下さい。

 

図2:永井選定 #uparl推し画像

 


【まとめ】

– 共用サーバにおける個別ページのURL
「共用サーバの資料URL」+「#?cv=」(開けゴマ呪文)+「画像番号-1」(0スタート)
(実例:Denkmaeler aus Aegypten und Aethiopien. Band 2、画像番号[29])
https://iiif.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/repo/s/asia/document/9a64ea1c-2840-6da6-1a3d-d722c88429e6#?cv=28

– ポータルにおける個別ページのURL
「ポータルの資料URL」+「#?pos=」(開けゴマ呪文)+「画像番号」(1スタート)
(実例:Denkmaeler aus Aegypten und Aethiopien. Band 2、画像番号[29])
https://da.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/portal/assets/9a64ea1c-2840-6da6-1a3d-d722c88429e6#?pos=29


[謝辞]
本コラムの作成に際して、東京大学史料編纂所助教の中村覚先生より、数々のご教示を賜りました。記して感謝申し上げます。

May 9, 2023