特任研究員 アクマタリエワ ジャクシルク
Akmatalieva Jakshylyk
皆さんはどこかで一度は「アルタイ語族」とか「アルタイ諸言語」とかの名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。「アルタイ語族」というのはチュルク諸語(→コラム「チュルク諸語を研究する」)をはじめ満洲・ツングース諸語、モンゴル諸語などを合わせて呼ぶ名前です。
しかし、私が研究している「アルタイ語」は、「アルタイ語族」のうちの一つの言語で、南シベリアのアルタイ共和国に住むアルタイ族の人々の言葉です。アルタイ語は、「アルタイ語族」のうちの「チュルク諸語」に属し、話者数は約5万人、極めて絶滅危惧状況にある言語の一つでもあります。
私はアルタイ語の研究に取り組んで4年近くなりますが、オンラインの機会を除けば、実はアルタイ人に直接会ったことはこれまでにありませんでした。それがなんと、今月(2024年10月)22日に、初来日しているアルタイ民族音楽グループの「チュルク・カバイ(チュルクのゆりかご)」メンバー(写真3)に会うことができました。彼らはアルタイの伝統の喉歌「カイ」(※「カイ」はアルタイの英雄叙事詩。声を振動させたりうなり声をあげたりする喉歌で詠唱されます)や二弦撥弦楽器トプショール(写真1)やウングル(写真2)などでの弾き語りを行う、アルタイ共和国を代表する歌手・演奏家たちです。
写真1 топшур(トプショール) 二弦撥弦楽器
写真2 унгур(ウングル) 口琴の一種
「チュルク・カバイ(チュルクのゆりかご)」の演奏家たちの公演(喉歌)を聞いて、まるでアルタイの山々、アルタイの人々の暮らし、アルタイの風が吹いてきたかのような感覚を覚えました。喉歌は特殊な発声法で、歌っているのは一人なのに二人で歌っているように聞こえます。彼らの堂々とした歌声と、自信に満ちた誇らしげな姿に心を打たれました。私自身、久しぶりに強い刺激を浴びた一日でした。
ところで、キルギス人の私とアルタイ人の演奏家たちが、何語で会話を交わしたのか、気になりませんか?実は、なんとそれぞれの自分の母語で話していたのです。つまり、私はキルギス語、アルタイの皆さんはアルタイ語で話しました。それでもなんとなく会話が通じました。このように「なんとなく」通じてしまうのは、チュルク諸語の中でも近い関係にある、キルギス語とアルタイ語ならではの現象かもしれません。どうしてもお互い納得できない時にはロシア語に切り替えて、「こうだよね」、「そうだね」というふうに互いに確認していました。なんとも不思議な感覚でした・・・
写真3 アルタイの伝統的な喉歌、アルタイ・カイチの演奏家たち。
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炎の守り人~アルタイの英雄叙事詩「カイ」 来日公演
10月19日(土)岐阜
10月20日(日)長野
10月22日(火)東京
10月23日(水)鎌倉
10月25日(金)甲府・桜座 https://sakuraza.jp/
10月26日(土)静岡・札の辻 CROSS HALL https://crosshall.jp/event/
10月30日(水)小田原三の丸ホール https://ooo-hall.jp/event/20241030.html
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24.Oct.2024