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東京大学附属図書館アジア研究図書館
上廣倫理財団寄付研究部門
Uehiro Project for the Asian Research Library

COLUMN

【世界の図書館から】インド国立文書館(インド)

 

東京大学大学院人文社会系研究科アジア史専門分野博士課程
水上 香織

インド国立文書館は、18世紀以降のインド行政に関係する未刊行資料を所蔵する大規模な公文書館である。イギリス東インド会社文書、イギリス植民地期インド政庁文書、独立後のインド政府文書などの公文書を中心的に所蔵しているが、いくつかの私文書のコレクションも有している。インド国立文書館の前身であるインペリアル・レコード・ディパートメント(Imperial Record Department)は、行政資料の管理と保存とを目的として1891年に当時の英領インドの首都であったコルカタに設置された部局であった。その後、1911年のデリー遷都に伴ってインペリアル・レコード・ディパートメントも徐々に行政機構のあるデリーへと移され、1947年のインド・パキスタン分離独立後にはインド国立文書館と改称されて、現在に至っている。 (D. A. Low, J. C. Iltis and M. D. Wainwright (eds.), Government Archives of South Asia: A Guide to National and State Archives in Ceylon, India and Pakistan, Cambridge: Cambridge University Press, 1969, p. 32.)

インド国立文書館の所蔵資料については、紹介書籍が多数出版されている。(D. A. Low, J. C. Iltis and M. D. Wainwright (eds.), Government Archives of South Asia: A Guide to National and State Archives in Ceylon, India and Pakistan, Cambridge: Cambridge University Press, 1969; National Archives of India (ed.), Guide to the Records in the National Archives of India, New Delhi: National Archives of India, 11vols., 1959-1992. など。)資料を探す際には、こうした書籍を参照しながら文書館訪問前にインドの過去の行政機構を確認し、どの部局でどのような事項が扱われていたのかを調べるとよい。国立文書館は基本的に国レベルで取り扱われた案件について文書を残しており、州以下のレベルで取り扱われた案件は州立文書館など地方に記録が残っている場合もあるので、注意が必要である。(州以下のレベルで取り扱われた案件も、国レベルまで報告があがって国立文書館にて書類が残っている場合もある。)リサーチ・ルームには行政機構の各部局関係資料のインデックスが配架されているので、インデックスを見ながら各自の関心にしたがって個別の書類を見つけ、閲覧請求をする流れになる。(インデックスが閉架資料になっている場合は、インデックス自体を閲覧請求する。適宜アーキビストに相談するとよい。)

また、ここ数年インド国立文書館の資料検索サービス(Abhilekh Patal:http://www.abhilekh-patal.in/jspui/)は著しい進化を遂げているため、資料探しの際には同ウェブページも活用すべきだろう。以前はリサーチ・ルーム内のパソコンからしか資料検索が行えなかったが、今は世界のどこからでも資料検索が行えるようになったうえ、ウェブ上で公開される資料も日々増えてきている。文書館訪問前にウェブ上から検索を行って、閲覧希望資料の見当をつけておくとよいだろう。

資料は、平日の10時、12時半、15時の3回のタイミングにて出納される。一回の出納タイミングに対して10件まで資料を請求することができるため、毎回の出納タイミング前に請求を行えば一日30件まで資料を請求することが可能である。請求資料はすぐに出納されるものもあれば、「調査中」「修理中」「リサーチ・ルーム内にあり(他の利用者が利用中)」などとして出納されないものもある。閲覧請求をした記録を手元に残しておいて、なかなか閲覧できないものについてはアーキビストに適宜相談するとよい。出納された資料は「何月何日まで動かさないでください」などのメモ書きを添えて壁際の棚に置いておき、数日かけて閲覧することができる。出納された資料を一度返却すると1カ月ほどは再出納できないため、注意が必要である。

文書館のリサーチ・ルームの近くには、バープー・コレクション(Bapu Collection)という名前の冠された図書館エリアがある。ここでは植民地期にインド政庁から刊行された報告書類など刊行資料を幅広く閲覧できるため、文書館と併せて活用するとよいだろう。

文書館のリサーチ・ルームでも図書館の閲覧室でも、PCは持ち込み可能、カメラやスキャナーは持ち込み不可能である。コピーは外国人料金が設定されており、紙のコピーに1枚6ルピーかかる。コピー申請時には自身の登録番号(enrollment number)が必要なので、利用登録時に番号を控えておくとよい。コピー・セクションが混み合っている際にはコピー請求の回数や枚数に制限がかかったり、受け取りまでに数か月かかったりすることもあるので、適宜担当者に状況を確認するとよいだろう。

基礎情報 インド国立文書館 (National Archives of India)

図書館ウェブサイトURL:
(文書館の概要説明ページ:)http://www.nationalarchives.nic.in/
(所蔵資料の検索ページ:)http://www.abhilekh-patal.in/jspui/

アクセス:(住所:National Archives of India, Janpath, New Delhi, Pincode: 110001)
地下鉄のイエロー・ラインあるいはバイオレット・ラインのセントラル・セクレタリアト(Central Secretariat)駅から約1キロ。インド政府関係のオフィスが集まるシャーストリー・バワン(Shastri Bhawan)の隣、インディラ・ガンディー国立芸術センター(Indira Gandhi National Centre for the Arts)の向かいに位置する。文書館前にはバス停留所もあるが、デリー市街地は渋滞が激しいため、バスを移動手段にする際には時間に余裕をみておいたほうがよい。

当該図書館の入館・閲覧に必要なもの:
パスポートのコピー、大学など所属研究機関からのレター、在インド日本大使館など在インド日本公館発行のレター。在インド日本公館でレターを発行してもらうためには、パスポートのコピーと所属機関から公館に宛てた推薦状が別して必要である。公館からレターを発行してもらうためには通常数日を要するが、訪問前に公館に連絡をいれてメールで必要書類を送付することで、訪問時にすぐレターを受領できる場合もある。事前にメールや電話で公館に事情を説明し、便宜を図ってもらえないか相談してみるとよいだろう。

開館日時:
月~金 9:30-20:00
土曜:9:30-17:30

資料出納のタイミング:
月~金 10:00、12:30、15:00
平日15:00以降や土曜日は新たに資料を出納してもらうことはできないが、既に出納された資料を閲覧したり、閲覧請求書類を提出したりすることは可能である(提出した閲覧請求書類は次の出納のタイミングに回収され、出納が行われる)。筆者が日常的に国立文書館を利用していた2014ー2017年当時は、入館時には文書館の建物の手前にあるゲートにて身分証明書を提示して一日分の入館証を発行してもらうシステムになっており、土曜日に入館を希望する際には前日までにリサーチ・ルームにて土曜日分の入館証を申請しておく必要があった。入館方法や開館時間は今後も変更される可能性があるので、その都度確認するようにすると間違いがない。

※会計窓口受付時間:
月~金 10:00-13:00, 14:30-16:30
コピー料金の支払いは会計窓口にて行う。受付時間が限られているので、利用時には注意が必要である。

その他特記事項:
現地を訪問する前に、資料検索サービス(Abhilekh Patal:http://www.abhilekh-patal.in/jspui/)を利用して資料をチェックするとよい。同サービスの利用アカウントは無料で作成することができ、デジタル化された資料を閲覧することも可能である。

(2018年10月15日掲載)