第1回U-PARLシンポジウムに寄せて

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今回は、1月に東京大学福武ラーニングセンターで開催された本研究部門主催のシンポジウム「むすび、ひらくアジア―アジア研究図書館の構築に向けて」で示された講師の方々の提言を、特任助教・永澤の視点でレポートいたします。

 

講師の先生方からは、アジアおよびアジア研究をめぐって次のような多様な視座が示されました。

  • オリエンタリズム批判の意義と限界
  • アジア各国における「アジア研究」に自国が含まれているかどうか
  • 日本から発信されてきた人文学の特性
  • 「漢籍」「仏典」など、地域や言語を超えて展開する資料をめぐっての研究のあり方や国際連携
  • かつてのアジア研究や資料収集の状況と現代との違い
  • 日本の図書館の位置づけ

そのうえで、次のような提言がなされました。

これからのデジタル・ヒューマニティーズ(人文情報学)は、単なる高速化をめざすのではなく、「境界」を越える手段となり、領域横断的な研究を促す方向に発展すべきである。

そして、デジタル化された資料が、できるだけオープンなかたちで公開されることが望まれる。従来、人文学の研究成果は出版物の形態で公開されることで評価されてきた伝統があり、そのことがオープンアクセスの遅れにつながっている。

また、二項対立的な「アジア」の捉え方ではなく、世界全体のなかに「アジア」を位置づける視点が必要である。そのためには、日本も含み込み、ときにヨーロッパ諸国とも重なり合う「アジア」の見方―まさに、「むすび、ひらくアジア」―が重要である。

一方、アジア研究図書館の役割として、国際連携を進めるとともに、自らがハブ拠点―多様な学問や人を結ぶ―となっていくことが求められる。そのために、日本で、東京大学で、「何」に独自性を見出し、世界に発信していくかを見きわめたい。

アジア研究図書館は、東京大学における全学的な資源集中の初の試みである。成功すれば「世界有数」となり得るだけの基盤が東京大学にはある。この試みを実現するため、デジタル・ヒューマニティーズにも通じた、21世紀の図書館にふさわしいサブジェクト・ライブラリアンの専門知のあり方を考えていくことが課題である。

以上のような問題提起がなされ、今後、アジア研究図書館の構築に向けて研究すべき課題が浮かぶ貴重な機会となりました。

 

なかでも、多様な学問や人がそこで出合い、ネットワークを結べるようなハブ機能をどのように実現するかが重要な課題だと感じました。人文科学、社会科学、自然科学といった枠をこえて、様々な資料や情報を扱う〈図書館〉という場のもつ意味は大きいと思います。

研究の専門性、個別性への配慮と同時に、学際的研究の発展につながる図書館、社会に広く開かれた魅力ある図書館の実現に向けて努めていきたいとの思いを強くいたしました。

東京大学のアジア研究図書館が〈何〉に独自性を見出し、国際的に価値のある資料や情報を〈どのように〉収集・提供していくべきかを、グローバルな視野をもって研究していきたいと思います。

 

講師の先生方ご自身による講演要旨はこちらでご覧になれます。

 

特任助教 永澤 済