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東京大学附属図書館アジア研究図書館
上廣倫理財団寄付研究部門
Uehiro Project for the Asian Research Library

COLUMN

上野でパキスタン

English

U-PARL特任研究員 須永恵美子

 

フィールド調査の夏です。U-PARLにはアジア諸国で研究するスタッフが揃っていますので、荒木特任研究員から台湾の便りが届いたり、海外のお土産がお裾分けされたりと、ずいぶん海外との距離感が戻ってきたと感じます。
パキスタンを調査地とする筆者は、諸々の都合でこの夏もフィールド調査の予定が立っておらず、海外へと旅立っていく同僚の背を少し寂しく見送っています。

しかしジメジメはしていられません。どうにかしてパキスタンの空気をたくさん吸い込んで熱い夏を乗り切るべく、上野で開催されている「パキスタン・フレンドシップフェスティバル2023」(パキスタン&ジャパンフレンドシップフェスティバル実行委員会主催)に参加してきました。

会場はU-PARLのある東大本郷キャンパスから、不忍池を横切って徒歩20分、上野の恩賜公園です。
この広場では、一年を通して台湾やインド、フィリピン、ベトナムなど各国の国際交流イベントが開催されています。
パキスタンの大規模イベントはコロナ禍で中断されていたので、実に4年ぶりの開催です。

会場はイベントステージ、飲食エリア、物販ブースに分かれており、真夏の平日昼間でしたが、家族連れでにぎわっていました。ちらほらとシャルワール・カミーズ(民族衣装)の方も見かけます。ちなみに、上野の気温は午前10時で35度、今日のカラチは29度、ラホールは33度ですので、パキスタンを上回る熱気です。

 

カッワーリーのライブパフォーマンス

 

筆者のお目当ては、大好物のビルヤーニー(ビリヤニ)とマンゴーです。
オープニングセレモニーやカッワーリー(宗教歌謡)のライブ演奏を横目に、早速レストランの列に並びました。飲食エリアには国内のパキスタン・レストランが出店していて、ビルヤーニーやカバーブ、ナン、各種カレーなど、スパイスの香りが立ち込めています。

パキスタンの代表的な飲み物といったらチャーエ(チャイ/ミルクティー)ですが、いかんせん熱々です。周りを見渡すと、夏におすすめの冷たいラッシー(ヨーグルトドリンク)の注文が多かったようです。そういえば、パンジャーブ州では水牛のミルクから作ったフレッシュなラッシーを朝食に頂きます。
パキスタンやインド料理では大きくてふかふかなナンやカバーブが有名ですが、これらを作るには専用の窯が必要で、現地でもレストランで食べるご馳走にあたります。家庭料理ではフライパンで焼ける薄いチャパティや煮込みの肉料理が多いです(家庭料理については拙稿もご覧ください)。予想以上のメニューの多さに長いこと迷いつつ、初志貫徹でチキンのビルヤーニーを購入しました。

体験コーナーでは、ヘンナという植物のペーストで手に柄を描くメヘンディーの実演もありました。これは南アジアや中東で見られる伝統的な化粧の一種で、筆者も現地の結婚式に参列する際には、新婦の従妹や友人たちを捕まえて描いてもらっていました。

お目当てのパキスタンから直送されるマンゴーも買い込みました。箱買いは諦めてバラで4個、それでも1キロ超えです。

パキスタンのご馳走を買い込み、ホクホクとU-PARLに戻り、戦利品を眺めながらこのコラムを書いています。ビリヤーニーの強めの香辛料が部門室に充満し、すっかり異国気分です。
さて、なかなかパキスタンに行けない空白を埋めるために参加したつもりでしたが、かえってフィールドが恋しくなってしまいました。次の長期休暇こそ、現地の友人たちに会いに行きたいものです。

 

(イベントは週末(8月6日)まで続きますので、上野にお立ち寄りの際は是非パキスタン料理に舌鼓を打ってください。)

August 4, 2023