趣旨
今日、様々な分野で知識・情報資源のデジタル化が進められています。本シンポジウムでは、個々の研究者による研究データの共有・公開の課題を踏まえつつ、これからのデジタル化とデータ共有の在り方について考えます。
第一部では、3つの分野からデジタル化と公開の事例を紹介するとともに、公開システムの構築や継続に関する課題についても情報共有を図ります。第二部では、分野横断的な研究データの共有・公開に向けた基盤整備について、現在進められている取り組みを紹介します。
開催概要
日時 : 2023年11月26日(日)13:30−16:30
会場 : 東京大学 総合図書館(本郷キャンパス)、及びオンライン(ライブ配信)
定員 : 対面30名、オンライン配信300名
申込方法: 事前申込制、先着順
申込締切: 2023年11月20日(月)24時 ただし定員に達し次第、締め切ります。
対象 : どなたでも参加できます
参加費 : 無料
プログラム
司会者挨拶
上原究一(東京大学附属図書館アジア研究図書館上廣倫理財団寄付研究部門U-PARL 副部門長、東京大学東洋文化研究所 准教授)
趣旨説明
蓑輪顕量(東京大学附属図書館アジア研究図書館上廣倫理財団寄付研究部門U-PARL 部門長、東京大学大学院人文社会系研究科 教授)
開会の辞
佐川英治(東京大学アジア研究図書館 館長、東京大学大学院人文社会系研究科 教授)
第一部 知識資源のデジタル化と公開の事例
第二部 分野横断的な研究データの共有・公開に関する取り組み
第三部 パネル・ディスカッション
閉会の辞
坂井修一(東京大学附属図書館 館長、東京大学大学院情報理工学系研究科教授)
発表要旨
徳原 靖浩 「図書資料のデジタル化:アジア研究図書館デジタルコレクション」
東京大学附属図書館アジア研究図書館上廣倫理財団寄付研究部門(U-PARL)では、漢籍や碑帖拓本などの貴重資料のデジタル化を進めてきた。デジタル化した画像の公開方法として、当初はflickrを使っていたが、2018年からは、東京大学デジタルアーカイブズ構築事業の一環として、IIIFに準拠した方法に変更し、現在は「アジア研究図書館デジタルコレクション」として公開している。IIIFに準拠することで、利用者は任意のビューワを使って画像を閲覧でき、目的に応じたプラットフォーム上で翻刻や注釈を行うなど、研究上の利便性が大きく向上する。本発表では、同コレクションの概要を紹介するとともに、デジタル化資料やデータの共有を進めていくことで、人文学研究のあり方にどのような変化が予想されるか、また共有を進めていく上での課題についても触れる。
柳澤 雅之 「フィールドノートのデジタル化と多目的・長期的利用」
海外でのフィールドワークの際に、研究者はさまざまなフィールドノートを作成する。その内容は、現地の自然環境条件や農業生産の様子、人びとの暮らし、現地での聞き取り記録など、研究者の研究目的に応じて多岐にわたる。フィールドノートの記録は、研究成果執筆のために使われた後、多くの場合、研究者の退職を機に行方知れずになる。このことは、フィールドワークが不可欠の研究にとって、ふたつの意味で課題となっている。ひとつは、研究成果の基データが確認できなくなること。もうひとつは、特定地域の特定の時点における現地の様子を記した貴重な情報が失われるからである。本発表では、フィールドノートの記録の特性に応じた、情報の保存と利活用を考える。特に、多様な人による記録の集積と利活用について、東南アジア研究で蓄積されたフィールドノートを事例に考える。
渡邉 英徳 「戦災・災害の多元的デジタルアーカイブズ」
近年、トルコ・シリア地震、モロッコ地震、さらにはウクライナ戦争・ガザ侵攻など、災害・戦災が続発しつつある。こうした災いのデータをリアルタイムに可視化し、社会に分かりやすく伝えるとともに、広島・長崎原爆、東日本大震災など過去の災いにまつわる貴重なデータ・記憶を未来に継承する 「多元的デジタルアーカイブズ」のデザイン手法について解説する。
池内 有為 「分野や国境を超えた人文学データの共有」
G7やユネスコが推進するオープンサイエンス政策では、分野や国境を超えて研究データを共有・公開し、異分野の研究者のみならず、広く市民が利活用することによって、新たな知見の創出や課題解決につなげることが期待されている。また、研究成果に対する評価について、論文数や被引用数といった量的な評価から質的な評価に軸足を移そうとする動きもみられる。こうした動向をふまえつつ、人文学における研究データを共有・公開する際の論点を挙げ、基盤整備や図書館の関わり方について展望したい。
南⼭ 泰之 「NII-RDCにおけるデータキュレーション機能の開発」
近年、研究データの再現性と再利用性を支えるためのプラットフォーム開発が国際的に進んでいる。日本においても、2021年4月に公開された「公的資金による研究データ管理・利活用に関する基本的な考え方」の中で、研究データ基盤システム(NII Research Data Cloud: NII-RDC)と様々なデータ・プラットフォームの連携により、統合的なデータ・プラットフォームを実現する構想が示されている。本構想の実現に当たっては、分散したプラットフォーム間において、研究データの解釈可能性を確保する仕組みが重要となる。本発表では、研究データの解釈可能性を高める活動であるデータキュレーションにつき、国際的な動向を中心に概観する。さらに、NII-RDCにおけるデータキュレーション機能の開発について、現在の取り組み状況を紹介する。
大向 一輝 「研究データエコシステムとデジタルアーカイブ」
近年、大規模なデジタルアーカイブやコーパスの公開が進み、これらを研究対象とした「デジタル人文学」と呼ばれる領域が注目を集めている。一方、著作権保護期間中の現代の資料や機微な内容を含む資料を扱う分野では、デジタル化やシステム構築・運用に関するリソースの確保が困難な場合がある。これに対して、発表者らは研究データ共有の観点から非公開データの管理や限定的な共有を低コストで実現するためのデジタルアーカイブ構築ツールを開発している。本発表では現時点における成果や今後の課題について報告する。
登壇者プロフィール
柳澤雅之(京都大学東南アジア地域研究研究所 准教授)
農学博士。京都大学東南アジア地域研究センター・助手、地域研究統合情報センター・助教授、准教授を経て現職。専門は東南アジアの生態史、ベトナム農村発展史、地域情報学。主な論文・書籍には、「地域情報学の読み解き-発見のツールとしての時空間表示とテキスト分析-」『地域研究』16-2(昭和堂、2016年)、『No life, No forest 熱帯林の「価値命題」を暮らしから問う』(京都大学学術出版会、2021年)など。
渡邉英徳(東京大学大学院情報学環・学際情報学府 教授)
1974年生。東京理科大学理工学部建築学科卒業(卒業設計賞受賞)、筑波大学大学院システム情報工学研究科博士後期課程修了、博士(工学)。株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメント、首都大学東京システムデザイン学部准教授を経て、2018年より現職。京都大学地域研究統合情報センター客員准教授、ハーバード大学エドウィン・O・ライシャワー日本研究所客員研究員などを歴任。現在、東京大学広報戦略本部広報室・副室長、東京大学大学院情報学環・副学環長を兼務。
池内有為(文教大学文学部 准教授、文部科学省科学技術・学術政策研究所 客員研究官)
フェリス女学院大学附属図書館勤務を経て、筑波大学大学院図書館情報メディア研究科博士後期課程単位取得退学。博士(図書館情報学)。専門はオープンサイエンスによる学術情報流通や科学研究の変容に関する研究と図書館における実践。主な業績に『オープンサイエンスにまつわる論点:変革する学術コミュニケーション』(共著、樹村房、2023年)など。
南山泰之(国立情報学研究所オープンサイエンス基盤研究センター 特任助教)
総合研究大学院大学複合科学研究科情報学専攻博士課程修了。博士(情報学)。国立極地研究所情報図書室、東京大学駒場図書館、東京財団政策研究所政策データラボを経て現職。関心分野は研究データのアクセスと再利用を促進するデータキュレーション。主な業績に「オープンサイエンスにまつわる論点:変革する学術コミュニケーション」(担当:編者)(2023年6月)、“Investigation and Development of the Workflow to Clarify Conditions of Use for Research Data Publishing in Japan”. Data Science Journal. 2020, Vol.19など。
大向一輝(東京大学大学院人文社会系研究科附属次世代人文学開発センター 准教授)
総合研究大学院大学複合科学研究科博士後期課程修了。博士(情報学)。国立情報学研究所助手、同助教、同准教授を経て現職。人文情報学、ウェブ情報学、学術コミュニケーションに関する研究開発に携わる。「学術情報サービス基盤CiNiiの開発」により文部科学大臣表彰・科学技術賞(開発部門)受賞。主な業績に「大学がつなぐDAとDH、大学をつなぐDAとDH」『共振するデジタル人文学とデジタルアーカイブ』(勉誠出版、2023年)など。
徳原靖浩(東京大学附属図書館アジア研究図書館上廣倫理財団寄付研究部門副部門長 特任助教)
東京外国語大学地域文化研究科博士後期課程中退。日本学術振興会特別研究員、東京外国語大学附属図書館特定専門職員、人間文化研究機構地域研究推進センター研究員(東洋文庫研究部イスラーム地域研究資料室勤務)を経て現職。専門はペルシア文学およびイスラーム地域研究情報資源の収集・組織化・利用促進に関する研究。主な業績に「アジア研究図書館の書架分類とアジア資料の動向について」『専門図書館』第314号(2023年)など。
参加申込お申込みの前に、注意事項をご覧ください。 |
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申込受付後、すぐに受付メールが自動配信されますのでご確認ください(メールが来ない場合には、有効なメールアドレスを入力し、改めてお申込みください)。 |
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<対面参加に関するご注意> | <オンライン(ライブ配信)視聴に関するご注意> |
■事前申込の確認できない方は、当日会場へお越しになっても入場できません。 | ■ 同一端末にて複数人でご視聴なさる場合でも、おひとり様ずつお申し込みください。 |
■ シンポジウム当日の総合図書館・アジア研究図書館の見学はできません。 | ■ アーカイブ配信の予定はございません(ライブ配信のみ)。 |
■ 密閉式のキャップが付いたペットボトル、水筒を除き、会場でご飲食はできません。 | ■ 配信内容の写真撮影(スクリーンショット・画面キャプチャを含む)・録音・録画はご遠慮ください。 |
■ 会場建物内にはペットボトル飲料を購入できる場所がございません。必要な方はあらかじめご持参ください。 | |
■ 写真撮影・録画・録音はご遠慮ください。 |
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■ 障害等のためご参加に配慮が必要な方は事前にお問い合わせください(申込フォームにも記入欄がございます) |
お問い合わせ
東京大学附属図書館アジア研究図書館上廣倫理財団寄付研究部門(U-PARL)
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Octber 2, 2023