
開催趣旨
人間の生は、学知と双方向的な関係にある。学術がまさに人間の営為であることにより、学知はそれを探求する者が何を志向し、その社会がいかなる産業のうえに成り立ち、いかなる価値観を共有していたかによって方向づけられる。他方、人間が知識の上に行為する存在であるがゆえに、個々人の生存や社会のあり方は学知によってその限界を規定されうる。
この視点からみるならば、現在は、長足の進歩を遂げつつある情報技術からの還流が産業と社会の構造、人間と人間の関係、そして個々人の生活へと波及し、その基盤にある構造を更新しつつある時期にあるだろう。それは同時に、我々が変容しつつある現実を捉え直し、何をもって生を意味づけるかという人文学的問いを今一度顧慮すべき時期でもある。この時点において我々は、我々がこれまでに保ってきた世界観・価値観を今一度吟味し、それが将来へといかに接合するかを検討しなければならない。
本ワークショップは、過去に起こった伝統知の再編を参照軸とすることで、この課題に向かおうとするものである。西洋との邂逅によって近代化を特色づけられたアジアにおいて、伝統知は自然科学と、そしてそれに基礎づけられた社会構造の変化と対峙することを迫られた。その伝統諸学における再編運動の諸相は、それと相似的な状況に置かれた我々に示唆を与えうるだろう。
本ワークショップは、東京大学アジア研究図書館上廣倫理財団寄付研究部門(U-PARL)第三期事業「文理融合・東西融合の研究:Society5.0における人の生き方」の一環として開催される。今年度テーマ「Society5.0における人のつながり」のもと、アジアをつなぐ伝統知の一つであった仏教を対象とし、その解釈学的体系たる「近代仏教学」がいかなる再編によって生まれたかを多角的に検討する。まずU-PARLより一色大悟が、前年度における仏教天文学書デジタル化事業成果をもとに、近世日本のインド仏教学において自然科学との邂逅がもたらした知識のあり方の変化を論じ、本ワークショップの総論とする。ついで各論として八尾史・柳幹康・釈道礼が、仏教学者の視点から、それぞれの専門における仏教学の近代化の意味について報告する。最後に、この仏教学における変容を、笠松和也が世界哲学の文脈に位置づける。
開催概要
【開催日】 2026年2月15日(日)
【開催形態】 対面とオンラインのハイブリッド形式(会場は、関係者のみ) 参加費無料
【登録用URL】 https://forms.gle/65RRa4E9J6gePn9a6

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※先着順、定員に達し次第締切
【プログラム】
13:00~13:10 趣旨説明(一色大悟 U-PARL特任准教授・副部門長)
13:10~13:40 「仏教学が近代化したということ:自然科学が引き起こした仏教における知識論的変動」(一色大悟 )
13:40~14:00 「東洋学者たちの南瞻部洲:仏教世界像への近代的視点」(八尾史 東京大学大学院人文社会系研究科准教授)
14:00~14:20 「鈴木大拙にみる禅解釈の近代」(柳幹康 東京大学東洋文化研究所准教授)
14:20~14:40 「継承と革新:十九世紀末-二十世紀初頭の間の東アジアにおける近代仏教教育の構築」(釋道禮 国立台湾大学歴史学科博士後期課程・華厳専宗学院国際華厳研究センター 助研究員)※オンライン参加
15:00~15:10 休憩
15:10~15:30 「実在をめぐる思考—明治後期の哲学と仏教」(笠松和也 九州大学大学院人文科学研究院日本学術振興会特別研究員PD)
15:30~16:00 全体討論
共催:東京大学アジア研究図書館上廣倫理財団寄付研究部門・東京大学東アジア藝文書院
