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東京大学附属図書館アジア研究図書館
上廣倫理財団寄付研究部門
Uehiro Project for the Asian Research Library

COLUMN

【世界の図書館から】マレク国立図書館(イラン)

マレク国立図書館

マレク国立図書館(イラン)

水上 遼

東京大学大学院人文社会系研究科アジア史専門分野博士課程

(テヘラン大学人文科学部歴史学科研究生)

マレク国立図書館(正式名称はマレク国立図書館・博物館 Ketābkhāne va Mūze-ye Mellī-ye Malek。以下、マレク図書館とする)は、テヘラン市エマーム・ホメイニー広場の西、外務省と様々な博物館の建物が並ぶ「国民公園 Bāgh-e Mellī」と呼ばれる場所にある。すぐ南にゴレスターン宮殿と大バーザールがあるこの一帯は、テヘラン市の行政の歴史的中心地であり、ガージャール朝期以来の建物が多い。

マレク図書館は、刊行図書約9万点、写本約6500点を所蔵するイラン有数の大図書館である(注)。この図書館の歴史は、タブリーズの有力家系であるマレクットッジャール(Malek al-Tojjār)家のホセイン・アーガー・マレクが、1937年に彼の父の自宅および所蔵していた書物をアースターネ・ゴドゥセ・レザヴィーへ寄贈したことに始まる。図書館は1996/7年までテヘランの大バーザールにあったが、前述のとおり、現在は国民公園の場所に移転している。現在の建物は2014年秋に改装が終わり、イランで最も新しく、使いやすい図書館の一つとなり生まれ変わった。

次の図書館の利用方法について説明しよう。マレク図書館は他のイランの諸図書館と比べ、短期滞在の外国人研究者も利用しやすい図書館と言える。まず、本館手前にある建物でパスポートを提示し、図書館利用のために来たことを告げる。守衛はパスポートを預かり、かわりに手荷物を預けるためのロッカーの鍵と、図書館利用者を示すためのカードを手渡してくれる。ここでロッカーに手荷物を預けた後、本館に入る。本館つき当たりにあるエレベーターで、刊行図書閲覧なら4階(男性用)または5階(女性用)、写本・文書閲覧なら6階に上がる。4階と5階の閲覧室のドアは電子ロックされており、入り口でもらったカードをかざすと入ることができる。

地上階。正面奥に閲覧室に行くエレベーターがある

地上階。正面奥に閲覧室に行くエレベーターがある

写本・文書の閲覧に際しては6階を利用することになるが、筆者の経験では、閲覧のみの場合は別段書類の提示を求められなかった。閲覧を希望する写本・文書の番号をカウンターで示すと、閲覧用のパソコンでその電子データを見られるようにセッティングしてくれる。

6階閲覧室

6階閲覧室

コピーを申請する場合、所属機関からの紹介状と、在学証明書などの自身の所属を示す証明書が必要となる。まずコピー申請書類に、自身の名前、住所などの基本事項、さらに研究テーマを記入する必要がある。その後、その書類をもって担当者のサインをもらい、名前の登録を完了させ、コピー代の支払いをする。サインは1階の「文化係 Omūre Farhangī」にいる2名からもらう。その後、3階の「管理・会計係 Omūre Edārī va Mālī」で名前の登録とコピー代の支払いを行う。名前の登録が済むと、5桁の番号を渡され、次回からその番号でコピーを請求できる。コピー代は一葉2000リヤルで、それとは別にCD代として5000リヤルかかる。これらの手続きを済ませ、6階に戻ると、画像データがCDにコピーされる。CDはその場で受け取ることができる。

即日画像データを受け取れる、という点でマレク図書館は非常に利用しやすい図書館であるが、反面、写本の現物の閲覧は基本的に認められない、という点には留意したい。筆者は試みたことはないが、もしどうしても現物を見たい場合は、事前にその旨をメール等で伝え、担当者に相談して許可を得る必要があるだろう。

また、所属機関から紹介状を出してもらう際に、「1週間」「1か月」など、利用したい期間を書いてもらうと、一つの紹介状で繰り返しコピーの請求ができるので便利である。

尚、マレク図書館の地上階は博物館となっており、同図書館が所蔵するクルアーンをはじめとする写本、硬貨、書道作品、絵画などの展示の他、創設者であるホセイン・アーガー・マレクや、イランの近代絵画に大きな影響を与えたキャマーロルモルクに関するコーナーもある。これら博物館のエリアにも、図書館の利用とあわせて足を運んでみてはいかがだろうか。

最後に、図書館周辺に関して述べたい。前述のとおり、マレク図書館の位置する国民公園とその周辺には諸官庁の他、イラン考古学博物館などさまざまな博物館が集中している。そのため、昼食をとるならば、一度エマーム・ホメイニー広場まで戻った方が良いだろう。

国民公園(Bāgh-e Mellī)の入口。ガージャール朝期の建築物が残る

国民公園(Bāgh-e  Mellī)の入口。ガージャール朝期の建築物が残る

写本カタログ ※翻字はnacsis翻字規則に基づく

Fihrist-i kitābhā-yi khaṭṭī-i Kitābkhānah-i millī-i malik (13)

Fihrist-i nuskhahʹhā-yi khaṭṭī-i Kitābkhānah-i millī-i malik 413巻)

(注)マレク図書館の所蔵する刊行図書および写本の点数に関しては、Marżīye Mortażavī Qaṣṣābsarāyī, ājj oseyn Āqā Malek, Tehran: 2012/3, p. 97を参照した。しかし、同書のp. 105では所蔵する写本数を19000点としている。なお、上述の写本カタログに含まれる写本のタイトル総数は6537点である。

アクセス

住所:Tehran, Kheyaban-e Emam Khomeyni, Kheyaban-e Melale Mottaḥed (Baghe Melli)

地下鉄1号線、4号線のEmam Khomeyni駅からEmam

Khomeyni通りを西に行き、徒歩5分

 

基本情報

図書館ウェブサイト

http://malekmuseum.org/

入館・閲覧に必要なもの

パスポート、在学証明書(英文)、所属機関からの紹介状

開館日時

夏季(3月21日~9月22日)土~木 8:15-16:45, 冬季(9月23日~3月20日)土~木 8:30~16:15

金曜日、祝日は閉館

その他

・写本は基本的に画像データの閲覧のみ

・紹介状に図書館を利用したい期間を記しておくと便利